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| HOME | 2008.01.14 Mon『精霊の守り人』
児童文学でありながら、読書の好きな幅広い年齢層の大人たちを続々と虜にし
NHKでアニメ化もされた「守り人シリーズ」の第1作。 “ファンタジー”と分類されるジャンルは従来あまり得意ではなかったのだけど、 文化人類学者でもあられる著者によって 隅々まできちんと無駄なく無理なく創られた、しっかりとした物語でした。
あらすじ:短槍使いの名手で、用心棒として身を立てる女・バルサは 偶然通りかかった青弓川の橋から落下した新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムの命を救う。 宮廷に呼ばれたバルサは、チャグムの母である妃に見込まれ チャグムを連れて逃げてほしい、命を守ってほしいと依頼される。 彼はその身に水妖の卵を宿しており、そのせいで父である帝から命を狙われているというのだ。 帝の隠密である<狩人>たちに追われながら、 同時にその卵を食らおうとする怪物・ラルンガの存在に脅かされながらも バルサはチャグムを守るべく、体を張って戦い続ける―。 皇子の重大な秘密を知ってしまったからには、 その依頼を断ればその場で殺され、承諾すれば命を賭けた戦いが続く。 いずれにせよ運命を受け入れざるを得なかった三十路の女・バルサの生き様が とにかくカッコいいです。 鍛え上げた身体能力に短槍使いの技、的確な状況判断ができ、人を見る目もある。 勿論、何の因果もなかった皇子の身柄を引き受けることに戸惑いや迷いもあるのだけど、 バルサ自身も幼い頃に似たような過去があって、見殺しにできない。 幼いチャグムと旅を続け、ひ弱な彼を鍛えていくにつれ 次第に親子の情にも似たものが芽生え、固い絆で結ばれる2人。 バルサの幼馴染で、彼女に好意を寄せる薬草師タンダやその師匠である呪術師トルガイなど 2人に力を貸す人たちにもそれぞれ魅力があって、 異世界を描いた物語でありながら、普遍的で人間らしい感情がベースになっています。 そして、よく言われるのがこの作品の「世界観」の素晴らしさ。 「世界観」って言葉、正しく解釈できてるかどうか気になったので調べてみると >世界およびその中で生きている人間に対して、 >人間のありかたという点からみた統一的な解釈、意義づけ。 とありました。 そう!その“統一的な解釈”が最後までブレないというか 読んでる側からしてもきちんと整理出来るところが気持ちよく読めるポイントかもしれません。 たとえば、目に見える人間の世界(サグ)と同じ空間に重なって存在するという 精霊の世界(ナユグ)。呪術を会得した者とチャグムのような特殊な状況にある者だけが 見ることができるというその世界の描写もそうだし、 今回の主軸でもある、チャグムの身に宿った水妖の伝説が覆される過程にしてもそう。 上辺とか思いつきではなくて、物語(ストーリー)を作るより事前に 1つの事象、1人の人物に対して、枠組みや生い立ちを隅々まで構築してるんだろうな という印象を受けました。 また、ありがちな「正義」と「悪」のはっきりした書き分けはなくて、 チャグムを追放することを決めた星読博士も、バルサを追う<狩人>たちも 皆がそれぞれに、その世界で生きていくことに懸命であるところに説得力がありました。 気になったのはチャグムの扱いかな。 彼の内面を、彼の視点でもう少し掘り下げても良かったんじゃないかなと思ったこと。 その身に起きたことはしっかり描いてあったけど、チャグム心の持ち様みたいなものが 少し霞んでしまっていたような気がしました。 あと、戦いの場面については「この人たちならきっと大丈夫」っていう安心感が先に立ってしまい、 「一体この先どうなるの!?」っていうハラハラ感があまり味わえなかったのが残念。 最後になりますが、カタカナが苦手な私は、固有名詞のカタカナがちょっと辛かったです。 「ラルンガって誰だったっけ??・・・あ、卵を食う怪物のことか・・・」みたいなことしきり。 チャグムに卵を産みつけた「ニュンガ・ロ・イム(水の守り手)」なんて 最後の最後まで覚えられる気がしませんでした(汗)。 その辺りは字面的にそのままの日本語でもいいんじゃないかと思うんですけど・・・。 (2008年1月14日読了/☆4)
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