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| HOME | 2008.01.11 Fri『ゴールデンスランバー』
伊坂さん、やってくれました!(感涙)
ファンとして、この作品を読めたことを嬉しく思います。 いやファンならずともこれは読むべき1冊だと思います。 現時点での最高傑作ではないでしょうか。
あらすじ:仙台での凱旋パレード中、突如爆発が起こり、新首相が死亡した。 同じ頃、元宅配ドライバーの青柳雅春は 「大きな謀略に巻き込まれているから逃げろ」と旧友・森田に促される。 折しも現れた警官は、彼に向けてあっさりと拳銃を発砲した。 どうやら、首相暗殺犯の濡れ衣を着せられているようだ・・・。 この巨大な陰謀から、果たして彼は逃げ切ることができるのか? (出版社からの紹介を一部引用) 青柳雅春の元交際相手である樋口晴子が 蕎麦屋のテレビで何気なく見た画面上で爆発事件を目撃する第一部と 発生直後から繰り返し取り上げ続けるテレビ報道を 病院の入院患者が無責任な予測をしながら延々と視聴し続ける第二部。 ここまでで青柳雅春という人物が世間ではどう見られているのか、 どういった経緯で犯人と断定されたのかが明らかになるのだが、 第三部はいきなり「事件の二十年後」に飛ぶ。 ここで、ノンフィクションルポ風の客観的な視点で この事件まつわる数多くの謎と“二十年後の青柳雅春に関する認識”が語られ 読者にひとつの大きな拠り所を与えておいて 満を持して第四部、事件発生当日から2日間の青柳雅春の一部始終が描かれる。 正直、読む前は「逃亡劇=リアリティがないのでは」という先入観があったのだけど この巧みな構成に、最初から見事に引き込まれてしまいました。 ※以下、少しネタバレありかも。未読の方は、ご注意を! * 恐ろしく大きな陰謀がうごめいていることを大学時代の旧友・森田 が身を呈して知らせてくれるところから、青柳の逃亡劇は始まる。 それは「とにかく逃げろ」「おまえ、オズワルドにされるぞ」という不可解な一言。 数年前に暴漢からアイドルを助けた際、テレビに映る自分を子供に自慢してくれた友人、 一方で無闇に発砲してくる警察官。彼が信じたのは友人の言葉だった。 「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ」 森田がむかし言ったこの言葉が、最後の最後まで青柳を支え続ける。 国家権力にも組織的陰謀にも負けない、たったひとつの強いメッセージ。 これ以上はないほどの危機的状況を悲観し絶望しそうになる時も 青柳は森田や樋口晴子らと過ごした大学時代を思い出し、そこからひらめきや勇気を得る。 そして、昔の思い出や仲間、信頼していた人たちが水面下で動き 彼自身も知らないところで救われるのだ。 それはまさに青柳の「習慣と信頼」によって得られたものだ。 暗澹たる現実に挿し込まれる、賑やかで温かい過去からの報奨が胸に響く。 もちろん、逃げる先々で新しく出会う人たちの助けもある。 昔からの知り合いにも、青柳が運良く出会った人たちにも共通するのは、 青柳の無実を信じる、というよりも彼がそんな大罪を犯したとは信じてないということだ。 長いものに巻かれ、目先の新しい情報を真偽も見極めずにどんどん誇張して垂れ流し ロックオンした標的を容赦なく突付き続けるマスコミの特性と それを鵜呑みにして迷走してしまいがちな大衆心理とは真逆をゆく、 自分の目で見たものだけを信じるという人たち。 中でもやっぱり、樋口晴子と青柳雅春の父親の存在は大きい。 「俺は犯人じゃない」という青柳のメッセージを見つけ 「だと思った。」とたったひと言だけ書き置く樋口。 マスコミにマイクを向けられ責めたてられても動じることなく 「ちゃっちゃと逃げろ、雅春」と言う父親。 「信じている」という言葉よりも、この2人の取ったシンプルな言動にすごくグっときた。 某文学賞の選考委員風に言えば こんな状況でこんな気の利いた台詞が言えるのか?みたいな疑問は残るのかもしれない。 けれど、そもそも選考委員の先生だって私たち一般読者だって 自分の息子や元恋人が全国指名手配になって国家を敵に回して 逃亡してるなんて状況になったことはないわけで、 そうなった時にどこまでの余裕があるのかどうかなんて、分かりっこないんだから 別にいいんだと思う。そんなちっぽけなことを気にしていられないくらいの 正しいメッセージがそこにはあるのだから。 事件が終息した後の、最後の第5部はもう涙なしに読めなかった。 特に最後の5ページ。ここを書くために、すべてがあっただろうと思える位の 出来すぎのラスト。予定調和かもしれないけど、文句なし! 今までの作品でやや気になっていた台詞回しのアク(癖?) みたいなものもすっきり取り払われ、テンポのいい洒脱な台詞の応酬に 嫌味がなくなった点もすごく良かったと思う。 (途中で出会う連続無差別殺人犯・キルオとの会話なんかは 少し洗練されすぎだろうと思わなくもなかったけど・・・) * とにかく、これは“伊坂幸太郎、ここにあり!”とでも言うべき 快心の作品であることは間違いありません。 ビートルズのナンバー“Golden slumber”を聴きながら、もう1度読みたい。 そして多くの人に読んでみてもらいたいと思いました。 (2008年1月11日読了/☆5)
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 ≪『悶絶スパイラル』 | Home | 『鹿男あをによし』≫ Comment
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