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「 2008年01月 」 の記事一覧
『厭世フレーバー』
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『ユージニア』
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『精霊の守り人』
児童文学でありながら、読書の好きな幅広い年齢層の大人たちを続々と虜にし
NHKでアニメ化もされた「守り人シリーズ」の第1作。 “ファンタジー”と分類されるジャンルは従来あまり得意ではなかったのだけど、 文化人類学者でもあられる著者によって 隅々まできちんと無駄なく無理なく創られた、しっかりとした物語でした。
あらすじ:短槍使いの名手で、用心棒として身を立てる女・バルサは 偶然通りかかった青弓川の橋から落下した新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムの命を救う。 宮廷に呼ばれたバルサは、チャグムの母である妃に見込まれ チャグムを連れて逃げてほしい、命を守ってほしいと依頼される。 彼はその身に水妖の卵を宿しており、そのせいで父である帝から命を狙われているというのだ。 帝の隠密である<狩人>たちに追われながら、 同時にその卵を食らおうとする怪物・ラルンガの存在に脅かされながらも バルサはチャグムを守るべく、体を張って戦い続ける―。 皇子の重大な秘密を知ってしまったからには、 その依頼を断ればその場で殺され、承諾すれば命を賭けた戦いが続く。 いずれにせよ運命を受け入れざるを得なかった三十路の女・バルサの生き様が とにかくカッコいいです。 鍛え上げた身体能力に短槍使いの技、的確な状況判断ができ、人を見る目もある。 勿論、何の因果もなかった皇子の身柄を引き受けることに戸惑いや迷いもあるのだけど、 バルサ自身も幼い頃に似たような過去があって、見殺しにできない。 幼いチャグムと旅を続け、ひ弱な彼を鍛えていくにつれ 次第に親子の情にも似たものが芽生え、固い絆で結ばれる2人。 バルサの幼馴染で、彼女に好意を寄せる薬草師タンダやその師匠である呪術師トルガイなど 2人に力を貸す人たちにもそれぞれ魅力があって、 異世界を描いた物語でありながら、普遍的で人間らしい感情がベースになっています。 そして、よく言われるのがこの作品の「世界観」の素晴らしさ。 「世界観」って言葉、正しく解釈できてるかどうか気になったので調べてみると >世界およびその中で生きている人間に対して、 >人間のありかたという点からみた統一的な解釈、意義づけ。 とありました。 そう!その“統一的な解釈”が最後までブレないというか 読んでる側からしてもきちんと整理出来るところが気持ちよく読めるポイントかもしれません。 たとえば、目に見える人間の世界(サグ)と同じ空間に重なって存在するという 精霊の世界(ナユグ)。呪術を会得した者とチャグムのような特殊な状況にある者だけが 見ることができるというその世界の描写もそうだし、 今回の主軸でもある、チャグムの身に宿った水妖の伝説が覆される過程にしてもそう。 上辺とか思いつきではなくて、物語(ストーリー)を作るより事前に 1つの事象、1人の人物に対して、枠組みや生い立ちを隅々まで構築してるんだろうな という印象を受けました。 また、ありがちな「正義」と「悪」のはっきりした書き分けはなくて、 チャグムを追放することを決めた星読博士も、バルサを追う<狩人>たちも 皆がそれぞれに、その世界で生きていくことに懸命であるところに説得力がありました。 気になったのはチャグムの扱いかな。 彼の内面を、彼の視点でもう少し掘り下げても良かったんじゃないかなと思ったこと。 その身に起きたことはしっかり描いてあったけど、チャグム心の持ち様みたいなものが 少し霞んでしまっていたような気がしました。 あと、戦いの場面については「この人たちならきっと大丈夫」っていう安心感が先に立ってしまい、 「一体この先どうなるの!?」っていうハラハラ感があまり味わえなかったのが残念。 最後になりますが、カタカナが苦手な私は、固有名詞のカタカナがちょっと辛かったです。 「ラルンガって誰だったっけ??・・・あ、卵を食う怪物のことか・・・」みたいなことしきり。 チャグムに卵を産みつけた「ニュンガ・ロ・イム(水の守り手)」なんて 最後の最後まで覚えられる気がしませんでした(汗)。 その辺りは字面的にそのままの日本語でもいいんじゃないかと思うんですけど・・・。 (2008年1月14日読了/☆4)
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『悶絶スパイラル』
お正月明けになんかスカっと笑いたくて購入したエッセイです。 何店か探したのですが、なかなか置いてなくて 最後に行った大型店で店員さんに意を決して聞くのがちょっと恥ずかしかったこのタイトル(笑) しかし表紙のイラストはすんごく可愛いですよねー。 窓辺で本を読み耽るラプンツェルの部屋が散らかってる、っていうのがグッジョブ! (漫画家の雁須磨子さんのイラストだそうです) 相変わらず、日々の何気ない暮らしの中での観察と考察(というか妄想)ぶりは健在で 随所にクスクス笑えるネタが満載であります。 じゅうぶん面白かったんですけど、前回読んだ『三四郎はそれから門を出た』に比べて 「はぁー笑ったわー」っていう満足度合いでいくと、本書はちょっぴり劣ったかな・・・私的には。 (『三四郎〜』の方はブックレビューも兼ねてたので一概に比較できないんですけどね・・・) 好きなのはやっぱりご家族の話! 弟さんとの掛け合いも相変わらず最高なんですけど、 ナイター観戦に行き、球場のスタンドで歯を磨くおかあさん・・・ トイレに行っても手を洗わないことを声高に語るおとうさん・・・ 何気にご両親もスゴイじゃないか(笑) “新作落語「カツラ山」”の話とか “難問もんもん”での結婚披露宴におけるスピーチに対する考察とかは さすがプロの作家さんだなーと素直に感心させられました。 あと、キ○キキッズの歌詞がどんだけ凄いのかかなり気になった(笑) 映画『メゾン・ド・ヒミコ』(オ○ジョーのシャツがイン)もチェックしなきゃ! しをんさんのエッセイは多方面にアンテナが張ってあって(漫画は突出してますが) 作家さんなのにその視線がお高いところからじゃないのがすごく好きです。 遡って過去のエッセイもこつこつ読んでいこうと思っています。 (2008年1月13日読了/☆3.5)
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『ゴールデンスランバー』
伊坂さん、やってくれました!(感涙)
ファンとして、この作品を読めたことを嬉しく思います。 いやファンならずともこれは読むべき1冊だと思います。 現時点での最高傑作ではないでしょうか。
あらすじ:仙台での凱旋パレード中、突如爆発が起こり、新首相が死亡した。 同じ頃、元宅配ドライバーの青柳雅春は 「大きな謀略に巻き込まれているから逃げろ」と旧友・森田に促される。 折しも現れた警官は、彼に向けてあっさりと拳銃を発砲した。 どうやら、首相暗殺犯の濡れ衣を着せられているようだ・・・。 この巨大な陰謀から、果たして彼は逃げ切ることができるのか? (出版社からの紹介を一部引用) 青柳雅春の元交際相手である樋口晴子が 蕎麦屋のテレビで何気なく見た画面上で爆発事件を目撃する第一部と 発生直後から繰り返し取り上げ続けるテレビ報道を 病院の入院患者が無責任な予測をしながら延々と視聴し続ける第二部。 ここまでで青柳雅春という人物が世間ではどう見られているのか、 どういった経緯で犯人と断定されたのかが明らかになるのだが、 第三部はいきなり「事件の二十年後」に飛ぶ。 ここで、ノンフィクションルポ風の客観的な視点で この事件まつわる数多くの謎と“二十年後の青柳雅春に関する認識”が語られ 読者にひとつの大きな拠り所を与えておいて 満を持して第四部、事件発生当日から2日間の青柳雅春の一部始終が描かれる。 正直、読む前は「逃亡劇=リアリティがないのでは」という先入観があったのだけど この巧みな構成に、最初から見事に引き込まれてしまいました。 ※以下、少しネタバレありかも。未読の方は、ご注意を! * 恐ろしく大きな陰謀がうごめいていることを大学時代の旧友・森田 が身を呈して知らせてくれるところから、青柳の逃亡劇は始まる。 それは「とにかく逃げろ」「おまえ、オズワルドにされるぞ」という不可解な一言。 数年前に暴漢からアイドルを助けた際、テレビに映る自分を子供に自慢してくれた友人、 一方で無闇に発砲してくる警察官。彼が信じたのは友人の言葉だった。 「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ」 森田がむかし言ったこの言葉が、最後の最後まで青柳を支え続ける。 国家権力にも組織的陰謀にも負けない、たったひとつの強いメッセージ。 これ以上はないほどの危機的状況を悲観し絶望しそうになる時も 青柳は森田や樋口晴子らと過ごした大学時代を思い出し、そこからひらめきや勇気を得る。 そして、昔の思い出や仲間、信頼していた人たちが水面下で動き 彼自身も知らないところで救われるのだ。 それはまさに青柳の「習慣と信頼」によって得られたものだ。 暗澹たる現実に挿し込まれる、賑やかで温かい過去からの報奨が胸に響く。 もちろん、逃げる先々で新しく出会う人たちの助けもある。 昔からの知り合いにも、青柳が運良く出会った人たちにも共通するのは、 青柳の無実を信じる、というよりも彼がそんな大罪を犯したとは信じてないということだ。 長いものに巻かれ、目先の新しい情報を真偽も見極めずにどんどん誇張して垂れ流し ロックオンした標的を容赦なく突付き続けるマスコミの特性と それを鵜呑みにして迷走してしまいがちな大衆心理とは真逆をゆく、 自分の目で見たものだけを信じるという人たち。 中でもやっぱり、樋口晴子と青柳雅春の父親の存在は大きい。 「俺は犯人じゃない」という青柳のメッセージを見つけ 「だと思った。」とたったひと言だけ書き置く樋口。 マスコミにマイクを向けられ責めたてられても動じることなく 「ちゃっちゃと逃げろ、雅春」と言う父親。 「信じている」という言葉よりも、この2人の取ったシンプルな言動にすごくグっときた。 某文学賞の選考委員風に言えば こんな状況でこんな気の利いた台詞が言えるのか?みたいな疑問は残るのかもしれない。 けれど、そもそも選考委員の先生だって私たち一般読者だって 自分の息子や元恋人が全国指名手配になって国家を敵に回して 逃亡してるなんて状況になったことはないわけで、 そうなった時にどこまでの余裕があるのかどうかなんて、分かりっこないんだから 別にいいんだと思う。そんなちっぽけなことを気にしていられないくらいの 正しいメッセージがそこにはあるのだから。 事件が終息した後の、最後の第5部はもう涙なしに読めなかった。 特に最後の5ページ。ここを書くために、すべてがあっただろうと思える位の 出来すぎのラスト。予定調和かもしれないけど、文句なし! 今までの作品でやや気になっていた台詞回しのアク(癖?) みたいなものもすっきり取り払われ、テンポのいい洒脱な台詞の応酬に 嫌味がなくなった点もすごく良かったと思う。 (途中で出会う連続無差別殺人犯・キルオとの会話なんかは 少し洗練されすぎだろうと思わなくもなかったけど・・・) * とにかく、これは“伊坂幸太郎、ここにあり!”とでも言うべき 快心の作品であることは間違いありません。 ビートルズのナンバー“Golden slumber”を聴きながら、もう1度読みたい。 そして多くの人に読んでみてもらいたいと思いました。 (2008年1月11日読了/☆5)
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『鹿男あをによし』
「あをによし」は和歌の世界で【奈良】を示す枕詞だそうです。
そう、そして奈良といえば鹿なのです。 しかしこのタイトルからストーリーを想像するのは容易くありません。 で、実際読んでみたものの、うまくあらすじを書けそうにもない・・・そんなお話です(汗)
あらすじ:大学の研究室で働く28歳の主人公。 助手との関係が気まずくなり、見かねた教授から 2学期限定で奈良の私立女子高の物理講師の職を勧められる。 渋々赴任した奈良で彼を待っていたのは1匹の鹿だった―。 ネタバレは避けようと思ったのだけれど 基本的なところなんでこれだけは書いておきます。 鹿がしゃべります、雄弁に。 その鹿は、主人公にある使命を言い渡すのですが もともと「神経衰弱」というレッテルを教授に貼られてきた主人公は それが現実なのか、自分が本当に衰弱して幻を見ているのか、分からない。 読んでる私にも、途中まではよく分からない。 しかし主人公は、その課せられた使命を何とかまっとうすべく いや、鹿曰く、そうなる宿命のままに突き動かされていくのですが 見えない敵に行く手を遮られます。そして、彼に悲劇が訪れるのです。 “鹿男”として生きざるを得ない事態が・・・。 と書くと、なんとも現実離れした突拍子もない話のようですが、 実はそうではなくて、ひとりの新人教師が成長していく学園ものとしても きちんと描かれています。 主人公が教師として赴任したこの学校で起こる様々な出来事 ―受け持ったクラスの生徒(堀田イト)との諍い、 職員室で隣の席になった歴史教師の藤原君との他愛もない会話、 剣道部の顧問として挑んだ姉妹校との交流戦 等々― そういった、細やかなエピソードがちゃんと根っこにあって、 それがどんどん鹿の言う使命と結びつき、 ひいては1800年もの歴史を遡る一大スペクタクル(?)にまで繋がって、 最後は大団円!・・・という、なんだかスケールが大きいのだか小さいのだか やっぱりよく分からない話なのでした(笑) でも、ストーリーを追うのは全然難しくなかったし、面倒くさくない。むしろ読みやすい。 そのバランス感覚がとてもよく出来た作品だと思いました。 他には、主人公の下宿先に住む同僚教師の重さんとそのおばあさんとか、 リチャード・ギア似のダンディな教頭とか、 姉妹校の剣道部顧問であるマドンナ先生とか、 漱石の「坊ちゃん」を思い出させるような個性派キャラが勢ぞろいで、楽しく読めました。 神経質で生真面目で鬱憤を抱え込むタイプの主人公が、 こういった魅力的な面々に囲まれて(時には騙されて?) 最後はちゃんと筋の通ったいい男になっていくいう過程も良かったです。 著者のデビュー作「鴨川ホルモー」に比べると 「ホルモー」の方が破天荒で突き抜けてて、私はあちらが好みだけど 奈良の歴史的背景とかまでひっくるめて書き込んであるこの作品には それとはまた違う奥行きがあったのかなという気がしています。 とにかく、2作続けてこの発想力がすごいなぁと思いました。 (2008年1月4日読了/☆4) 【余談】 人気の漫画や小説を原作としたドラマ化が後を絶たない昨今とはいえ さすがにこれがドラマ化されるとは思いませんでした。 「鹿男」をどのように表現するのか、まあ楽しみでもあるのですが、 でも藤原君を女性に(しかも若くて可愛い女性)に設定なのはいかがなものか。 藤原君は主人公の相談相手であり、奈良のいろはを教えてくれる相棒であり とにかく心和ませるナイスキャラなのに、 公式ページを見ると「マイペースで話がかみ合わない」とか「同じ下宿に住む」 とか目が点になるような設定に様変わりしているではないですか! 連続ドラマにするにあたり、原作を膨らませる必要があるのは分かるけど、 そこを変えてほしくなかった・・・。 ま、まさかラブとか芽生えちゃったりしないでしょうね!?・・・不安だ。
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