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「 2007年11月 」 の記事一覧
『一瞬の風になれ』
昨年の吉川英治文学新人賞受賞作、そして2007年本屋大賞受賞作。
買ってから1年近く寝かせたままでしたが(汗)、やっと読みました。 今さらですが、評判どおりに素晴らしかったです。号泣です。 ああーーーなんで私はもっと早くちゃんと読まなかったんだろう? 少なくとも夏の世界陸上の前に読んでおけばよかった!! そうすれば、日本がメダルなんか取れなくても、あのトラックに立つことの凄さを感じて もっともっと目に焼き付けておけたのに・・・。
あらすじ:主人公・神谷新二は、中学時代からずっとサッカー部に所属していたが、 Jリーグからスカウトされる天才選手の兄・健一を間近で見るにつれ、 自分の能力に限界を感じるようになる。 そんな折、幼馴染の一之瀬連と同じ高校に入学。 連が陸上短距離界で全国的に注目される選手でありながら、 競技から遠のいていることを知った新二は、彼を誘い二人で陸上部に入ることを決意する。 兄と連、二人の天才の間でもがきながら、それでも二人に近づこうと新二は走り続ける―。 私が今まで読んだ佐藤多佳子さんの作品に出てくる男の子は みんなちゃんと自分のやりたいことがあって、 苦しんだり挫折したり遠回りしながらも、自分自身の中でちゃんとそれを消化して、 夢や目標に向かって成長していく・・・そんな素敵な男の子ばかり。 こんな男の子に出会えちゃったヒロインを思わず羨ましく感じてしまうほどです(笑) この作品の主人公である新二も例にもれず、 ひたむきで、努力家で、情に厚くて、ちょっとシャイで、ものすごくイイ奴でした。 いやだって普通、歳が近くて同じ競技をやってる天才の兄貴がいたら もっとスレちゃうもんなんじゃないかと思うけど、 健ちゃんの才能を誰よりも信じているのが新二なんです。 第2巻の終盤で、健ちゃんと新二、2人とって乗り越えなくてはならない 大きな壁にぶつかり、お互いの思いが錯綜するシーンが、私的にはいちばん号泣だった。 そして、新しく陸上を始めることにしたら、今度は幼馴染が天才で、 しかもそいつが逃げてばかりで真面目にやらないことを叱って 引っ張り戻して一緒に泣いちゃうんですよ、この子は。 もう、一体どれだけ私の胸をキュンとさせるのだ、新二よ・・・。 才能は誰にでも与えられるものじゃないと知っているからこそ、 2人にその才能を大事にしてほしいと新二は願うのです。そして自分も努力する。 試合での集中力、体力、走りの技術、風をきる感覚。 いろんなものを積み重ねて大きくなっていく彼の成長ぶりは、本当に眩しいの一言でした。 自分の体中のすべてのパワーを使って、100mを一瞬で駆け抜ける、その感覚。 足の遅い私には一生味わえないことだけど、伝わってくるんですよね。 チームメイトたちも良かった。 新二と連、彼らと一緒に走るリレーメンバーにもいろいろドラマがあって。 学年ごとにメンバーが入れ替わって、先輩後輩のいざこざがあったり、 それぞれが実力の壁にぶつかったり・・・。 大会で競う他校の選手たちとも実力を認めあって、 男同士のライバル意識を越えた友情が、もうまさに青春。 そして、青春といえばもちろん恋もありますよ。こちらもキュンときます。 いろんなことに悩みながら、次第に信頼関係が生まれてお互いにいい影響を与え合う、 その姿がすごく良かった。 世知辛いご時世だけど・・・こんな高校生たち、どこかにいると信じたい。 キャラクターはかなり豊富でしたが、私のいちばんのお気に入りは ダントツで陸上部顧問の三輪先生(みっちゃん)! 穏やかで飾り気がなくて、選手それぞれをしっかり見ていて、叱るべき時は叱って 自分が高校生だった頃の夢を闇雲に押し付けることもなく 生徒を人間として信頼して伸ばしてあげられる。 こんなにいい先生なのに、こんなに素敵な男性なのに、なせ独身なのだ!? 私が嫁になってもいいぞ!(なんの立候補だ) そんなみっちゃんがファンなのが奥田民生で 『イージュー☆ライダー』という曲の歌詞が作中に出てきます。(私もこの曲大好きさ!)
この小説は、もうまさにこの歌詞のとおりの 大げさなんかじゃなく、こういうものがギュギュっと詰まった宝箱のような作品でした。 ラストは「えっ!もうここで終わり?」という感もありますが、 不思議とまったく不満は残りません。いいんです。 だってこの先、新二や連やチームメイトがどう走っていくのか、 健ちゃんのことも、新二の恋の行方も、どうなっていくのかすべてきちんと思い描けるから。 本を閉じても、まだまだ向こうにフィールドが広がっている、そんな感じです。 ああ青春っていいなぁ!最高っす!!(感涙) (2007年11月25日読了/☆5)
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『わたしを離さないで』
我々人間の中には、ひとりひとり違った“記憶”が存在しています。
同じものを見て、聞いて、食べて過ごしたとしても ひとりとして自分とピッタリ同じ記憶をもつ人などこの世にいないのです。 だからこそ、思い出というものは特別なんだと私は思います。 酔いしれたり、美化したり、やり過ごしたり、葬り去ったり・・・ そうやって、いろんなことを自分の中で繰り返しながら、記憶は日々姿を変えていく。 それが生きていくということではないでしょうか。 この本は、ひとりの女性が記憶を呼び起こしながら、 思い出を・・・そして自らの「生」を語るお話です。 誰のものでもない、彼女だけの記憶と彼女だけの生―。 主人公は、自他共に認める優秀な介護人として働くキャシー・Hという女性。 ヘールシャムという全寮制の施設で育った彼女が、 ルースとトミーという親友と過ごした日々を思い返しながら 静かに語っていくという形式で物語は進みます。 施設のしきたりや寮生活での楽しみ、友人との諍いと仲直り、先生に対する思慕の念など、 小児期〜思春期の多感な日常が、自然豊かなヘールシャムの風景をバックに、 滑るようにするすると語られ、じんわり引き込まれていきます。 特にキャシーとルース、2人の女性の心理を浮き彫りにする筆致が実に巧みでした。 訳文もすごくシンプルで読みやすく、翻訳モノがあまり得意でない私でも 違和感なく落ち着いて読めました。(感謝) 決して抗えない宿命を知るべきか知らざるべきか、 知ったところでどうやって生きていくべきか、 焦燥感や諦念に身を焦がしながらも、彼らは自分だけの「生」をまっとうすべく模索します。 冒頭にも書きましたが、そういったお話です。 ネタバレすると読む面白さが半減してしまうと思いますので、これ以上は書きません。 この本を読んですごく思ったのは、 「生きたい」と願う人がいたとして、その命を奪い去ることは絶対に許されないように その人の中に育まれた記憶がある限り、 それを奪い去る権利は誰にも許されないのではないか、ということでした。 途中で奪い去るくらいなら、失いたくないと思うような記憶を持たせなければいい。 その方がきっと幸せなんじゃないか。乱暴ですが、そんなことを考えました。 未読の方には何が言いたいかよく分からないかもしれません。(すみません) でも、本当に多くの人に是非読んでみてほしいと思える作品です。 何も予備知識のない、真っ白な状態で読まれることを強くオススメします。 (私はそうだったので、とても良かったと思っています。 ネット上には、思い切りキーワードの書かれた感想がたくさんあって「コラー!」ってなりました。 本当に、そういうのはやめていただきたいのです) (2007年11月8日読了/☆4.5)
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『ジェネラル・ルージュの凱旋』
『チーム・バチスタの栄光』から続く、“バチスタシリーズ”第3弾。
東城大学医学部付属病院が舞台となるメディカル・ミステリーは 本来の主人公である(それにしてはここ最近影が薄かった)不定愁訴外来の田口先生が 院内の問題に巻き込まれて奔走するという形にようやく戻ってきました。
あらすじ:桜宮市にある東城大学医学部付属病院の万年講師・田口公平の元に、 一枚の怪文書が届いた。 それは救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着しているという、 匿名の内部告発文書だった。病院長・高階から依頼を受けた田口は 事実の調査に乗り出すが、倫理問題審査会(エシックス・コミティ)委員長・沼田による 嫌味な介入や、ドジな新人看護師・姫宮と厚生労働省の“火喰い鳥”白鳥の登場で、 さらに複雑な事態に突入していく。 将軍(ジェネラル・ルージュ)の異名をとる速水の悲願、 桜宮市へのドクター・ヘリ導入を目前にして速水は病院を追われてしまうのか・・・。 (宝島社HPより抜粋・修正) このシリーズはとにかくキャラ設定に重きを置いているというか それぞれにコードネーム(異名)みたいなのをつけてインパクトを与えようとする節があり、 そこが癇に障ることも多いのですが、 今回の“将軍(ジェネラル・ルージュ)”速水部長はといいますと それはもうカッコいい筋金入りのスーパードクターでございました!将軍ピッタリ!! まあ、「ルージュ」の部分はさすがにちょっとあり得ないだろう・・・と引きましたけど 彼の技術と判断力、そして理想と信念には惚れ惚れしてしまいました。 目の前で苦しむ人の命を少しでも早く、できるだけたくさん救いたいという 医師としていちばん明確な使命を成し遂げることが 現実のしがらみの前にいかに大変なことであるか・・・そういったメッセージも強く感じました。 で、そんな速水部長を告発する内部文書を 同期でもある田口センセがどのように処理していくのか、というのが今回の事件なのですが 「大学病院は魔の巣窟ですか!?」と思わず問いたくなるような 手強い、というかすごくヤな感じの人間がこれでもかと立ちはだかり、 あの白島がちょっと霞んでしまうほどの理論武装、すなわち屁理屈の応酬は スピード感もあってなかなか読みごたえがありました。(ネチネチ沼田もいい味出してました) 田口先生と速水先生は全く違うタイプだけど、 どちらも長いものに巻かれることなく、ちゃんと筋を通すんです。そこが素敵。 敵と目されていた意外な人物が助け舟を出してくれるというサプライズもお見事でした。 ラストがちょっと安っぽいメロドラマ的展開だったのはご愛嬌か。 前作『ナイチンゲールの沈黙』と同時進行という設定で 内容もかなりリンクしてる部分が多かったので、 「ナイチンゲール」→「ジェネラル・ルージュ」と続けて読むのがベターかもしれません。 最後に・・・このシリーズはまだまだ続くのだと思いますが 「バチスタ」の桐生先生にしても「ジェネラル」速水先生にしても こんなに優秀な人材があんなことやこんなことになって、この病院は大丈夫か?と 心配になってしまいます(苦笑) あと、姫宮のキャラなんですけど・・・私は正直あまり好きじゃなくて 今回もICUで速水先生と絡むシーンとかは、なんか納得できないというかイライラするというか。 これから先も彼女はこういう位置付けで走り回るのでしょうか・・・(不安)。 とかなんとか言いながら、このシリーズの続きが出たらきっと読むと思います。 ついついそう思わされるところが魅力なんでしょうね。 次はどんな事件が起こるのか、田口センセの活躍が楽しみです。 (2007年11月7日読了/☆3.5)
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