| 私の本棚。読了本の感想等をぼちぼち綴ってマス♪ | |||||||||
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「 2007年10月 」 の記事一覧
『この本が、世界に存在することに』
「本」にまつわる9編の短編集。 図書館に行くと角田さんの棚はいつもチェックしていて、 殆どの著作のタイトルを知っていたはずなのに、 この本のことはポッカリ抜け落ちていました。 目にした瞬間に「読まなくちゃ!」と思いました。 なんとなく「これはきっとステキな本だ」という予感がしたというか。 実際に読んでみて、予感的中でした。 とても良かったです。 本を読むことが好きな人なら、ほぼ確実に好きなのではないでしょうか。 * 「旅する本」 かつて自分が手放してしまった本に、海外の古本屋で巡りあう偶然?必然?を描いたお話。 「だれか」 旅行先のタイで寝込んでしまった主人公。旅行者たちが宿に置いていった本に様々な想像を巡らせる。 「手紙」 恋人と喧嘩して一人で泊まった旅館に置き忘れられていた本には一通の手紙が挟まれていて・・・。 「彼と私の本棚」 本の好みがまったく同じだった恋人と別れることになり、二人で使っていた本棚を整理する女性の心理。 「不幸の種」 部屋に招いた恋人が、私の部屋の本棚から見つけたという本を読み耽っている。だが、私には見覚えがない・・・。 「引出しの奥」 裏表紙を開いたところにたくさんの書き込みがあるという伝説の古本を、クラスメイトと共に探し出すことに。 「ミツザワ書店」 小説で新人賞をとった主人公。「誰に最初に伝えたいか」と問われ、生まれ故郷の小さな書店のことを思い出す。 「さがしもの」 入院中の祖母から誰にも内緒で1冊の本を探してくれと頼まれたが、どうしても見つからないまま時が過ぎ・・・。 「初バレンタイン」 生まれて初めてできた恋人に、自分の人生を変えた本をプレゼントしていいものかどうかと悩む女の子。 * どれもしみじみといいお話でしたが、 特に印象に残っているのは「彼と私の本棚」、「ミツザワ書店」、「さがしもの」かな。 作中の台詞が忘れがたくて、すごく胸に響きました。
また、「あとがきエッセイ 交際履歴」と題された角田さんのあとがきも素晴らしかったです! 何度も何度も頷きながら読みました。
本を作る立場に居ながら、 ひとりの読書人として1冊の本を大事に思う気持ちを持ち続けている角田さん。 本を通して誰かと出会ったり、1冊の本によって運命が変わってしまったり、 本の持ち主である知らない誰かの人生に思いを馳せたり、 同じ本を数年後に読むことで自分自身の変化に気付いたり・・・。 この作品の主人公たちは皆、著者自身のそんな部分を少しずつ投影しているのかなと思いました。 目の前にある『この本が、世界に存在することに』 常に感謝と愛しさを忘れずに、謙虚な自分でありたい。 そういうことに気付かせてくれる素敵な1冊だと思います。 (2007年10月28日読了/☆4)
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『赤い指』
東野作品ではおなじみの加賀恭一郎刑事が鋭い洞察力を見せつけ、 少女殺人死体遺棄事件の真相と、1つの家族が抱える深い闇に迫る中編ミステリー。 あらすじ:ごく普通のサラリーマン・前原昭夫は4人家族。 認知症の母親を渋々引き取るものの、妻はその姑を疎んじていて不仲。 長男は不登校で親とろくに口もきかない・・・。 夫としても父親としても、問題を直視せずに逃げ続けてきた彼の家庭で ある日突然、事件は起こる。 そこには見知らぬ少女の遺体が横たわっていた―。 核家族化、老人介護、いじめ、引きこもり、少年犯罪・・・。 現代の日本に山積する様々な問題をこれでもかと盛り込んだこの作品は、 ミステリーとしての謎解きよりもまず、その設定がリアルだ。 少年犯罪が起こるたびに「親の顔が見てみたい」というのはよく聞く台詞ですが、 実際に見たらこんな感じなのかもしれない・・・というような。 家庭内の問題を積極的に解決しようとせず逃げるばかりの父親も、 息子を溺愛し甘やかすばかりの母親も、きっとどこにでもいる。おそらく沢山いる。 じゃあ、実際に子供が何かとんでもないことをしてしまった時に、 親は一体どうするべきなのか―? 前原夫妻は、いちばんやってはならない行動をとります。 必死に知恵を絞り、ある恐ろしい計画を考えつくのです。 その行動のおぞましさ、人間としての醜さ、弱さは 読んでいてかなりの怒りを感じるほど身勝手極まりないものですが、 最後の最後に、タイトルにもなっている『赤い指』の謎が明らかになり この計画のすべては破綻することになります。 けれど、それは決して靄が晴れるものではなく、悲しさだけが胸に広がる結末でした。 昭夫を覗く家族一人一人(特に息子)の心理描写が極端に少なく、 そのあたりも東野作品らしいと感じました。 変な言い方だけど、それでいて分かりきった気にさせるのが妙味なのではないかなと。 加賀刑事自身の父親との確執というエピソードが盛り込まれていたのも、 親子の無関心さをあり得るものだと感じさせながら、 どこかで逆転できるという可能性を示す意味で効果的だったように思います。 ただ如何せん、謎解き部分のトリックにはかなり無理を感じたのと 完全に被害者側が置き去りにされているという印象を最後まで拭えず、 正直な読後感としては今ひとつ・・・と言わざるを得ませんでした。 加賀刑事にはアッパレですけどね。 (2007年10月27日読了/☆3)
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『悪人』
あらすじ:佐賀県と福岡県の県境にある三瀬峠で、石橋佳乃というOLの絞殺死体が発見される。 彼女はその日の晩、出会い系サイトで出会った清水祐一と会う約束をしていたが、 かねてより好意をもっていた大学生・増尾圭吾に会うと同僚たちに嘘をついていたのだった。 事件の争点は、その日を境に姿を消した増尾の行方 そして、実際に佳乃と待ち合わせをしていた祐一の行動に絞られる。 彼女がこの日実際に会ったのはどちらだったのか。 誰が三瀬峠に彼女を連れて行ったのか。誰が彼女を殺したのか。 「悪人」とは一体誰のことなのか―。 殺されてもいい人間なんて、この世にいないはずだけれど 瞬間的に他人に殺意を抱かせてしまうような言動をとる人間が存在するのもまた 悲しいけれど事実なのだと思う。 加害者はもちろん断罪されるべきだが、この作品では加害者の人間性のみならず 事件に至るまでの被害者の言動や事件の発端となった第三者の存在、 そして当事者の家族や友人等が、それぞれ異なる視点で1つの事件を振り返る構成をとることで 絶対的な「悪人」の存在を時に強調し、また時にぼやかす。 意図的に振り幅を持たせている感じがすごく効いていて、面白く読み進めることができました。 ※以下、少しネタバレありかも。 他人と付き合うことのバランス感覚が著しく乏しい祐一、 プライドばかり高くて自分のことしか考えられない佳乃、 都合の悪いことからは逃げ回る卑怯者のくせに、自分を大きく見せようとする増尾、 出会ったばかりの男を信じ、自分の人生を投げ出そうとする光代。 この事件に関わる若い男女はみな孤独で、愚かだ。 でも、そんな彼らにも嘆き、悲しみ、苦しんでくれる肉親がいる。 祐一の祖母や佳乃の父といった、地に足をつけて懸命に生きてきた人たちの思いが きちんと描かれていて、作品に厚みが増していたように思います。 中でも、佳乃の父親の言葉が胸に染みました。
この言葉が、4人のうちの誰か1人でも届いていれば そもそも事件は起きなかったのかもしれない。罪が軽くなったかもしれない。 これは今、実際に世の中で起きている事件にも言えるのではないかと、そう思いました。 * 法律には触れない程度の悪事をはたらき、その悪意を隠そうともしない人間や 他人の弱みに悪意をもって付け込み、優越感にひたれる人間を「悪人」とするなら、 犯人自身は決してそうでなかった、という風に読ませるところが この作品で唯一違和感をおぼえた点でしょうか。 彼は「シーソーの上になることが我慢できない人」なのではないか、と私は思いました。 罪を自分が背負いこむことで、シーソーを真っ直ぐにしようと必死になっただけで 彼自身は「悪人」ではないのかもしれない。それも分かります。 でもやっぱり衝動的に他人の命を奪ったというその1点で「罪人」なのだから・・・。 彼が殺害後に出会った光代に対する気持ちがたとえ本物だったとしても、 「もっと早く出会っていれば」なんてやっぱりムシのいい台詞にしか聞こえず、 あの逃避行が美化されたまま終わったとしたら納得できなかったかもしれません。 でも、最後の最後に彼自身の手で彼女をシーソーから引きずり降ろすシーンは 彼女を、そして読者を再び戸惑わせるインパクトがあったし、 そうしたことで、タイトルを『悪人』としたのも「なるほどなぁ」という感じでした。 * 長くなりましたが、まだまだいろんな真実が埋め込まれている小説だと思います。 ボリュームのある1冊ですが、読み進めていく中で自分の感情をひっくり返し、 その行間からたくさんの重い思いを感じ取る楽しみがある、見事な作品でした。 (2007年10月22日読了/☆4.5)
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『楽園』
![]() あらすじ:9年前に起きた大量殺人事件(『模倣犯』収録)以来、 未だショックから立ち直れぬままのフリーライター・前畑滋子。 彼女のもとに、萩谷敏子という中年女性が訪ねてくる。 12歳で事故死した彼女の1人息子・等(ひとし)が遺したノートに、 ある“事件”の現場と被害者らしき絵が描かれており、事実関係を調査してほしいと言うのだ。 その事件とは、失踪したと思われていた土井崎茜という少女の亡骸が 自宅の床下に遺棄されていたというもの。 火災に遭ったのを機に茜の両親が殺害を自供し、16年の時を経て初めて明るみに出たのだった。 等は何故、この事件を予見する絵を描くことができたのか―。 そして、この殺人死体遺棄事件の裏側にある真相とは―。 この作品は、人間の弱さが引き起こした“どうしようもない”事件を追うミステリーであると同時に 登場人物ひとりひとりの生い立ち、暮らしぶり、そして事件に対する葛藤を 細やかに愛情深く描いてあって、人間ドラマとしての奥行きをじゅうぶんに感じさせてくれます。 改めて、宮部みゆきは稀有な作家だなぁと思いました。 * 前半は、萩谷等の絵に潜む謎を解明すべく 萩谷親子に関係する人々の証言や 絵に描かれていた事件現場周辺の聞き込みを中心に進んでいきます。 調べれば調べるほど、滋子の頭に浮かび上がる1つの仮説― 萩谷少年には、接触した人間が隠す秘密を読み取る特殊な能力 (サイコメトラー、千里眼といったようなもの)があったのではないか? 普通に考えればあり得ない。 あり得ないからこそ、それを立証するために 少年が偶然に土井崎家の事件のことを知ってしまった可能性、 もしくは、事件の関係者が少年に吹き込んだ可能性はないかと、滋子は調査を進める。 そして、萩谷親子の周辺から土井崎家につながる道筋を手繰り寄せていった結果、 後半は焦点ががらりとすり替わっていきます。 土井崎茜は何故両親の手によって殺められなければならなかったのか? 両親は何を守ろうとして、16年も隠し続けた秘密をあっけなく自白したのか? * 萩谷敏子の生まれ育った環境にも、土井崎茜と彼女の両親が抱えていた事情にも 他人が決して踏み込めない家族の領域、各家庭が抱える薄暗い場所がありました。 1枚の絵の謎を追ったことから、滋子は結局そこに足を突っ込んでしまうのです。 正直、滋子が何のために躍起になっているのかが分からなくなる瞬間もあり、 「もうそのくらいでいいんじゃない?」と声を掛けたくなるような時もありました。 けれど滋子自身も、出向く先々で9年前の事件との関わりに触れられ 今まで目を背けていた過去に真正面から向き合っていくのです。 だからこそ、真相を追うことを最後まで止められなかったのではないか。 過去の教訓から「これでいいのか」と思案したり、時には突っ走ってしまって反省したり、 そういった成長の跡や人間臭さ、また夫との良好な協力関係という 滋子という1人の人間のベースになる部分までしっかり踏み込んであったから、 やはり最後まで彼女応援する気持ちにもなれたのだと思います。 あと、本編の合い間に「断章」という、別の少女のストーリーが挿入されるのですが きっと最後には本編の筋書きと交わるのだろうと分かっていても、読むのが怖かった・・・。 本編の緻密な構成に対して、断章の何が起こるか分からない危うさ。 そのバランス感も見事で、ストーリーを追う面白さを助長していたように感じました。 (『模倣犯』を読んだ時の印象と比べてみても、ラストに向けて収束していく感じが シャープになっているような気がしました) 作中で、土井崎茜の両親の弁護士が滋子に対して発した台詞が印象深いです。 「全部がすっきり割り切れて、全員の気持ちが落ち着くなんてことはあり得ない」のだと。 我が子に手をかけるという、あってはならない悲しい出来事が起きた背景には 両親が決して表沙汰にしたくはない事実があり、茜の妹・誠子という守るべき存在があった。 事件の発覚により多くのものを失った誠子が、それでもやはり真実を知りたいと訴え、 けれど真相の解明を前にしてだんだん気持ちが変化していく過程や ずっと口をつぐんでいた母・向子の最後の告白にすべてが集約されていたと思います。 人間は愚かで、どうしようもなくて、すべてがすっきり割り切れることはない。 だから、ラストはこういう幕の引き方もアリなんじゃないかなと、私は受け入れられました。 ただ、滋子が萩谷敏子の依頼を本腰を入れて引き受けざるを得なくなった もう1枚の絵に関する謎が、最後まで明らかにならなかったのが少し残念。 (2007年10月26日読了/☆4.5)
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『螺鈿迷宮』
スピンオフ、っていうんですか? 本編では脇役であった人物や物語の中心でなかった場所に焦点を当てて、 別のストーリーを制作するという、最近流行りの手法ですね。 この作品は、『チーム・バチスタの栄光』に始まる、いわゆる“バチスタシリーズ”のスピンオフ的作品です。 舞台は、これまでの東城大学医学部付属病院ではなく、同じ市内にある桜宮病院。 桜宮病院は老人介護センター、ホスピス施設と寺院を一体化させた複合型病院で、 終末医療の最先端施設としてメディアの注目を集めている一方、数々の黒いウワサがあった。 ひょんなことからそこに潜入することになったのが、今回の主人公で落第医大生の天馬大吉。 大吉はそこで姫宮という看護師に出会い、この病院に隠された謎を解明していくのだが・・・。 それまでのバチスタシリーズで、名前だけはやたら登場していた、白島の部下・氷姫。 それが看護師(に扮した)姫宮でした。 キャラクター的にものすごく意外な感じでしたが、まあここは良いとして。 感想を率直に言えば、途中までは全然引き込まれなかった・・・。 大吉クンの1人称での語り口が妙に大げさというか、芝居がかってるというか。 面白さを出そう出そうとして上滑りしてる感じがしました。 桜宮病院の人々も、それぞれに割と強めのキャラ付けがされているにも関わらず 実像が思い描けないし、ギュっとまとめるだけのエピソードがない。 ま、あり得ない人物設定やエピソードが弱いのはまだ許せても やっぱり、これまでの作品にはあったリーダビリティが今回感じられなかったのは、 読者としてはちょっと辛かったです。 とは言え、事件が解き明かされていく終盤はなかなか読み応えがありましたし、 今後のシリーズに影を落としそうな伏線(東城vs桜宮の対立関係)はしっかり残してありました。 しかし、この作品の結末が持つ意味は一体なんだったのか?と問われるとどうも答えにくい。 どちらかというと前フリ部分(終末医療や医療行政の在り方、「死」に対する考え方) に踏み込んで、事件性を薄くした方が面白かったのではないか、とも思いました。 かなり辛口な評になってしまいましたが、これも期待の表れなのでございます。 次回作はシリーズの本筋に戻るようなので、田口センセ&白島のコンビ復活に期待です。 あ、この本の1つ良かった点を添えるならば、装丁ですね! 螺鈿のヌメっとした妖しい光が見事に浮き出ていて、美しいなぁと思いました。 (2007年10月11日読了/☆2.5)
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