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「 2007年02月 」 の記事一覧
2007.02.27 Tue
『夜は短し歩けよ乙女』
冒頭の1ページ目を読んでビビっときました。
「ああ、これはゼッタイに好きだ」と。
予感が確信に変わるのにさして時間は掛からず、読み始めてすぐに虜になりました。
キラキラした夢の中にいるような楽しい読書タイムを提供してくれたこの本に
こうして出逢えたのも何かのご縁。・・・なむなむ!

夜は短し歩けよ乙女
夜は短し歩けよ乙女
posted with amazlet on 07.02.27
森見 登美彦
角川書店 (2006/11/29)


とにかくまあ主人公の“黒髪の乙女”が可憐で愛らしいんですっ!!
この本ではそこかしこに様々な奇人変人たちが登場するのですが
彼らととアっという間に仲良くなれてしまう天真爛漫ぶり。お上品なのに快活。
おまけにおそろしいほどの酒豪。
すべてにおいてキュートでチャーミングであります。

そんな彼女に片思い中なのが同じクラブに所属する“先輩”。もう1人の主人公です。
 「あ!先輩、奇遇ですねえ!」
 「ま、たまたま通りかかったもんだからさ」
この本は、彼女とこの会話を交わしたいがための
そしてあわよくばその先にあるバラ色のキャンパスライフを夢見る彼の
涙ぐましい努力の記録と言っても過言ではありません!
春は夜の繁華街、夏は古本市、秋は学園祭・・・
止まらない“ロマンティック・エンジン”という名の妄想を胸に彼女を追う先輩。
まさに彼女の歩くところに先輩あり!といった感じであります。
自らを “彼女の後ろ姿の世界的権威”と称するほどです。

そして行く先々で巻き起こる大騒動。(その嵐の中心に彼女がいるんだけどね)
荒唐無稽で滅茶苦茶なんだけど、エピソードひとつひとつが面白いのなんのって!!
また、これに見事なほどに巻き込まれ振り回され、
嵐の隅っこで彼女に気付かれぬまま奮闘する先輩・・・
その“路傍の石ころ”っぷりが最高なのでございます。

この2人が交互に語りかける形で物語が進んでいくのですが、
その交代のタイミングがまた絶妙でした。
先輩が『読者諸賢、割り込んで申し訳ない』とか言って出てくるの、大好き(笑)。
独特の文体も、テンポの良さも、すべて私のツボをこれでもかと刺激しまくりで
もはや、この本の魅力を私の貧困なボキャブラリーではうまく表現できません。

読むべし。
そして、人事を尽くしまくった結果、彼に訪れた天命に拍手すべし。

(2007年2月26日読了/☆5)
 

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌
◆「マ」行の作者→森見登美彦    Comment(4)   TrackBack(0)   Top↑

2007.02.21 Wed
映画 『それでもボクはやってない』
「やってない」無実の人が、やってもないのに罰せられること。それが冤罪。
痴漢という卑劣な犯罪の嫌疑をかけられてしまった主人公を通して
冤罪事件ってなんだ、裁判ってなんだ、というテーマに正面から向き合っている映画でした。
2時間半近い時間がアっという間に感じるほど、素晴らしい展開と構成にも脱帽。

   d0055469_931825.jpg

私たち観客は “主人公は「やってない」” という前提で映画を観始めます。
が、あれよあれよという間に主人公は警察へ出頭を余儀なくされ、
刑事から取り調べを受け、留置所に入れられ、弁護士と向き合い、検事に尋問される。
ここまでが本当にアっという間でぐいぐい引き込まれます。
主人公を演じる加瀬亮さんがいい味なんですよ〜。どこにでもいそうな青年の演じ方が抜群デス!

認めれば不起訴、罰金さえ払えばすぐに出られる、裁判をしても勝てる保証はない・・・
刑事に検事に弁護士に何と言われようとも、「ボクはやってない」と言い続ける主人公。
そして起訴され、裁判が始まる。
ここで、裁判なんて無縁の世界に生きてきた主人公の母(もたいまさこ)と友達(山本耕史)が登場。
(お2人ともさすがの存在感でした!)
私たち観客も置いていかれることなく、2人と同じ目線で、ひとりの関係者の面持ちで
裁判をが何たるかを学び、見守ることができます。いわば、主人公の味方です。

※以下、若干ネタバレありです。これから観る方はご注意を!
 

テーマ:それでもボクはやってない - ジャンル:映画
◆私的シネマNavi    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

2007.02.20 Tue
『陰日向に咲く』
本屋大賞にもノミネートされ、昨年の話題をかっさらった1冊とも言える
劇団ひとりの処女小説。
芸人が書いた作品としてでなく、ひとつの小説として読んだ結果
やはりいい意味で芸人としての観察眼の鋭さがビンビン伝わってくる佳作でした。

陰日向に咲く
陰日向に咲く
posted with amazlet on 07.02.20
劇団ひとり
幻冬舎

短編が5編。
それぞれの登場人物が他のストーリーにも少しずつ関わってて
リンクしていくという流行の連鎖をおさえて仕上がっています。
時代設定もぜんぶ現在かと思わせておいて、
実はうーんと前(アノ人の若い頃の話だったのね!)というのが後から分かったりして。

で、出てくる人は壊れた人ばっかりです(笑)
おいおいおい、ちょっと大丈夫かよ???っていう、妄想の連続。
そのネジのはずれっぷりの描き方がもう非常に巧い。
実際にアイドルに入れ込んだり男に騙されたりギャンブルに嵌ったりする人って
ご本人の中でごく当たり前にそんな思考回路なんだろうな〜と思わされるし
それぞれの主人公の喋り言葉(オタク口調だったりギャル口調だったり)で進んでいく文体も
違和感がまったくない。おもしろいな、と思いました。

みんな変な人たちなんだけど、自分の中ではすごく一生懸命。
おかれた状況を誤魔化そうとか、逃げちゃおうとかはしてないの。
・・・あ、「オレオレ」って騙そうとしてうまくいかないような奴は出てきますが(笑)。
なんというか、著者自身がそういうズレた感覚だとか、そのズレを信じて疑わない人たちに
すごく愛着を感じているというか、おもしろがってイジってやろうとする視点をひしひしと感じました。
そこが芸人さんならではなのかもしれないなぁ。
劇団ひとりってこの話に出てくる人たちを全部演じられそうな気がするもの。

サクっと読めるので普段ゆっくり読書する時間のない方にもオススメ。
いや、サクっと読めるのに後から味わい深いのがスゴイんだ、この作品は!
次の作品(が出るなら)、読むのが楽しみです。

(2007年2月19日読了/☆3.5)
 

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌
◆「カ」行の作者→その他    Comment(2)   TrackBack(0)   Top↑

2007.02.20 Tue
『クローズド・ノート』
ちょっと出来すぎな感もある、ストレートな恋愛小説。
イマドキな設定の中に古典的な仕掛け。
どう感じるかは人それぞれだと思います。

クローズド・ノート
クローズド・ノート
posted with amazlet on 07.02.20
雫井 脩介
角川書店

主人公は教育大学に通う香恵という女の子。
性格設定としては、おっとりした天然ボケタイプで
人の意見に影響されやすく、でも思い込んだら一途で割りと大胆。
男性目線で見ると「なんかほっとけないな、あの娘・・・」的な存在でしょうか。

そんな香恵がバイト先の文具店で知り合うのがイラストレーターの石飛さん。
穏やさの中にほんの少し憂いがあって、掴み所がなくて人を惹きつけるような男性です。
※表紙にもなっていますが、2人が出会うのは万年筆売場。
  様々な万年筆について、それはそれは詳しく書かれています。
 これを読むともれなく万年筆で字を書いてみたい衝動にかられます(笑)

石飛さんへ募る想いと、なかなか発展しない関係に加えて
親友の彼氏(鹿島さん)からの積極的なアプローチ。
悩む香恵が次第に心の拠り所としていくのが、
アパートの前の住人が置き忘れていったノートと手紙でした。

そこに綴ってあったのは伊吹という名の女性の日記。
小学校教諭として日々の出来事を細やかに記録し、真摯に仕事に向き合う姿勢と
その一方で、大学時代に片思いをしていた男性と再会し、
ひとりの女性として揺れる気持ちが溢れていました。
手に取るつもりのなかったそのノートを開きはじめてから、
香恵は深く共感し、伊吹先生の言葉に背中を押されるようになっていきます。
そして香恵自身の恋がそのノートに繋がって、思いがけない結末を迎えるのです―。

・・・いや。
「思いがけない」と驚くのはおそらく本の中の香恵ちゃんだけで
大半の読者は途中からもうすべての筋書きが読めてしまうことでしょう。

まったくもってアっと驚く展開ではないし
香恵以外のキャラクターもかなりステレオタイプ。
鹿島さんの女たらしっぷりとか、石飛さんに好意を寄せるお嬢様(恋のライバル)とか。
そうだそうだ・・・アレですよ。
この分かりやすさと後に引きずるものの無さは、読みきりの少女漫画みたいな感覚です。

今ひとつ感情移入できにくかったというか、心を揺り動かされなかったのは
主人公・香恵が子供っぽいと感じたからだろうか。
「そこでその言動はあり得なくない?」と度々思ってしまったのは
それとも私が歳をとって偏屈になってしまってるからだろうか。

けれどこの本を格調高くしているのは、間違いなく伊吹先生の日記。
「こんな先生がいてくれたらなぁ」と理屈抜きで思わせてくれるような素敵な女性なのです。
そしてあとがきを読むことでさらにその思いが確かなものになります。ああ、そうだったのかと。
このあとがきだけで、評価ポイント☆0.5アップでした。

(2007年2月17日読了/☆3)
  

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌
◆「サ」行の作者→その他    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

2007.02.15 Thu
『書店風雲緑』
小さい頃から、私は暇さえあれば本屋さんに入り浸っているような子供でした。
学生時代も社会人になった今も、やっぱり書店に行くことが好きで
何を買うでもなく本を眺めて、貴重な休日の時間を潰してしまったりもします。
(図書館の静寂さもいいですが、書店の雑多な感じも落ち着くのです)

長年“買う”立場として親しみ続けてきた書店という場所を、
本を“売る”立場として知る人の思いや書店業界の現状を知りたいと常々思っていたので、
『本の雑誌』等でコラムを連載なさっているカリスマ書店員(※)
田口久美子さんの著書を手に取りました。
 ※田口さんは現在、ジュンク堂池袋店に副店長としてお勤めだそうですが、
  ジュンク堂HPにいくと「東のカリスマ」と紹介されています!

書店風雲録 書店風雲録
田口 久美子 (2007/01)
筑摩書房

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さて、誤解を恐れずにあえて評するなら、
この本は回想録。「あの頃は〜だった」という思い出話の本です。
それ以上でもそれ以下でもないような気がします。 

西武百貨店のテナントとしてスタートし、
「文化戦略」の多方面展開における一端を担った書店(wikipediaより抜粋)『リブロ』。
その創設期を支えた人たちへのインタビューを核としながら、
当時の経済情勢や西武グループの歴史、世間の流行や思想傾向等を振り返り
どんな本が求められたか、どんな書店を目指していたか、がつらつらと綴られます。

ところで、『リブロ』という書店。私の住む街にも1店舗あるんですが、
自宅からも職場からも遠いので、あまり頻繁に足を運ぶ機会はありません。
でも、立ち寄ると他の書店とは違う雰囲気を感じるお店なのです。
どこが?と言われると・・・やはり取り扱う本の種類や並び方。
美術書とか洋書とか思想書、あとオシャレなインテリアの本など
実用性重視というよりは「アート」を全面に出した感じなんですよね。
立地上、若い女性の利用率が高そうなのでそのせいかな〜と思っていたのですが
この本を読んで納得しました。
創設者やその当時のスタッフによる意図的な売場作りが、受け継がれているというわけです。
哲学とか思想とかカルチャーとか、私はそういった方面にめっぽう疎く
例えば『ポストモダン』がああでこうでと書かれていてもいまひとつピンとこないので
そういった箇所はスルーしてしまったのですが、
かなり博識な書店員さんたちがその思いや当時の苦労を色々と語っておられます。

読んでいて「ほぅ」と思ったのは、各書店におけるレイアウト構成のことや
(印象が異なる大型チェーン店であっても、
 売場展開に差異があるだけでジャンル構成比は実は似ている、とか)
純文学、現代文学、ミステリーetcのジャンル分けは年々複雑化して
右往左往しておられるといった話など。
やはり自分が書店を利用する際にも気にしてしまう部分でした。

ただ本を並べるだけではなくて、「棚を作る」ということ。
その棚における意味合い、並びの流れ、本どうしの関連性を考え抜くこと。
また、本が売場に辿り着くまでの摩擦やしがらみ。
様々な工夫や努力が積み重なっていて、その分だけ苦労も随分と大きいのだと
今さらながらほんの一端を知ることができました。

(2007年2月15日読了)
 
 

◆エッセイ・実用書    Comment(0)   TrackBack(1)   Top↑

2007.02.13 Tue
『Presents』
今までもらった中でいちばん印象に残っているプレゼントは何ですか?
と質問されて、私はうまく答えが思いつかないのです。
でもきっと、誰かに与えたものよりもずっと誰かからもらったものは随分多くて
もっと大事にしなきゃいけなかった、
これから先はもっと大事にしなくちゃいけない、そんなことを改めて思った1冊でした。

Presents
Presents
posted with amazlet on 07.02.14
角田 光代 松尾 たいこ
双葉社

この世に生を受けた時に両親が一生懸命考えてくれた“名前”から
死を看取ってくれる人たちが流してくれる“涙”まで―
女性が生涯でもらい続ける様々な「Presents」を綴った短編小説です。

私がこの本を図書館で手に取ったのは、この装丁がすごく綺麗だったから。
カバーそのものが大事なプレゼントをラッピングした包装紙のようになっているという趣向です。
文中の挿絵も松尾たいこさんが描かれていて、とても色鮮やかでした。

小説はプレゼントをもらう年代順に12編が並んでいます。
私がいちばん好きだったのは“鍋セット”。
大学に合格して東京で1人暮らしを始める娘と、引っ越しを手伝いにきた母親。
不安で押しつぶされそうだけど、母親の前ではそれを隠してぶっきらぼうになる娘に
母親が手渡す大・中・小の3つの鍋のセット、にまつわるお話。

自分が就職して1人暮らしを始めた時のことと完全にオーバーラップしてしまいました。
しかも、私はちょうど実家に帰省していて、母親に駅まで送ってもらい
そのあとすぐの電車の中で読んでしまったのでもう泣けて泣けて・・・。

他にも、小学校入学時に買ってもらった“ランドセル”とか
結婚式当日に親友たちがくれた手作りの“ヴェール”とか
風邪をひいた時に家族が作ってくれる“料理”とか・・・。 
人生の節目にも、なんでもない日常の中にも様々なPresentsが散りばめられている。
著者の角田さんの言葉を借りるならば

品物は、いつかなくしてしまっても、贈られた記憶、その人と持った関係性は、
けっして失うことがない。
私たちは膨大なプレゼントを受け取りながら成長し、老いていくんだと思います。


私は誰かにそんなプレゼントを贈ったことがあるのかな。
夫に、母親に、友人に、将来の家族に、大切な人たちに
大切なものをもらった分だけせめて「ありがとう」の笑顔を返せるような女性でありたいです。

(2007年