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2007.01.30 Tue
『風が強く吹いている』
“箱根の山は蜃気楼ではない。
  襷をつないで上っていける、俺たちなら”


「超ストレートな大型青春小説」と帯にはありましたが
それはもう見事なまでの剛速球で、私の心にど真ん中ストライク!!
走ることは大の苦手な(しかも長距離なんて滅相もない)私ですが、
ほんとに面白くてのめり込んだ、素晴らしい作品でした。

風が強く吹いている
風が強く吹いている
posted with amazlet on 07.01.30
三浦 しをん
新潮社

寛政大学4年・清瀬灰二(以下、ハイジ)と新入生の蔵原走(カケル)。
2人の出会いは唐突だった。
運命としか言いようのないその偶然の一瞬で
ハイジは走にほとばしる才能を、
そして自分が探し求めていた究極の何かに辿り着く予感を感じ取る。
すべてはそこから始まった。
ハイジは走を巻き込み、同じアパート(竹青荘)に住む他の8名と共に
大学駅伝の「頂点」、あの箱根駅伝を目指すという無茶な(でも真剣な)宣言をする―。

ハイジも走も理由あって陸上の一線から退いているものの、
元はかなりの実力をもったランナー。
2人とも走ることを心から愛しているのに、走る場に飢えていたのです。
しかし、他のメンバーはほとんどが陸上未経験者。
そんな彼らが、理知的でちょっと強引でそれでいて面倒見もよくて、
誰よりも走ることに誠実なハイジに心を動かされ(ていうかうまく操られ)ていきます。
もうね、あり得ないほどポンポンと物事が進んでくけど全然気にならない。
そんなの、面白いからどうだっていいんです!
その様子が本当に可笑しくて、何度となく噴き出してしまいました。
衝突したり、励まし合ったり、刺激を受けたり。そんな風にして10人だけの挑戦は続くのです。

メンバー全員のキャラクターの描き分けも絶妙でした!
既読の方にしか分からなくて申し訳ないですが
ハイジがカッコいいのはもちろん、私は個人的にニコチャン先輩が好き。
(留年して大学5年目。でも3年生。学費はすべて自分で稼ぐ苦労人)
決して出しゃばらないけど、ハイジのいちばんの理解者という感じと的確なツッコミがたまらん。
あと神童(地元ではそう呼ばれるほどの秀才だった)の穏やかさ。
ムサ(外国人留学生。ただし陸上のではなく純粋な勉学のための)との
ほのぼのとしたやり取りも可愛いかった。
それと、キング(←クイズ王だから)が抱えていた自分の個性に対する不安もすごく共感できたし
天真爛漫でちょっと的外れな双子(ジョータ&ジョージ)も、クールで知的なユキも、
走ることが苦手なのに最後まで頑張ったマンガおたくの王子(ルックスが甘いから)も
もちろん主人公の走も不器用だけどイイ奴。全員ほんとにイイ奴なのだ。

そして、とうとう手にした箱根本選へのキップ。
それぞれが今までの自分を思い出しながら、これからの自分を思い描きながら
仲間たちへの揺るぎない信頼を胸に走り、ひたすら懸命に襷をつなぐ様子は
もう読んでいるこっちまでがまさに手に汗握ります。
どうか、どうかこの人たちをこのまま真っ直ぐに走らせてあげてください、と。

ただ早く走れるスピードがあればいい
「走ること」はいつだって「自分ひとりですること」なんだから・・・
ずっとそう思い込んでいた走に対してハイジは
「速さを求めるだけじゃ駄目なんだ。強くなれ」とい言います。
そして最後に走は気付くのです。

走りとは力だ。スピードではなく、一人のままでだれかとつながれる強さだ。



読み終えるのがこんなにも寂しい本に出会ったのは
本当に久しぶりだったような気がします。
実はこれを読み始めてすぐに少しばかり落ち込むような出来事があったんですが
この本の世界に居る間だけはとても元気でいられました。元気を分けてもらいました。

本選の様子では各区間の距離やコース上のポイント、目安タイムも詳細に載っているので
実際の箱根駅伝を見ながら読むのもまた一興かもしれません。
っていうか、新年明ける前に読んでおけばよかった・・・。
そしたら今年の箱根駅伝、かぶりつきで見てたと思う。
よし。今年の暮れには再読しよう!
いや来年どころか今からすぐにでももう1度読みたいくらい気に入ってしまいました。
駅伝が、そしてスポーツが好きな全ての人に是非読んでみてほしいです!!

(2007年1月29日読了/☆5)
 

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌
◆「マ」行の作者→三浦しをん    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

2007.01.27 Sat
『ぼんくら』
江戸のとある長屋で次々と起きる事件に関わる人々の生活と人情が
軽妙かつユーモア溢れるタッチで描かれ、
事件の全容が浮き彫りになっていくまでの経過も鮮やか!
読み進めるのが心地よい作品でした。

ぼんくら
ぼんくら
posted with amazlet on 07.01.27
宮部 みゆき
講談社








まず、構成がとても巧み。 
最初に続く短編5篇の中で、長屋に住む人たちの性格や暮らしぶり、
事件の伏線となる出来事がポンポンと描かれ
そして満を持して本編の「長い影」という長編に突入します。

事件を追うのは主人公の井筒平四郎。下級役人(同心)です。
元来が怠け者で面倒くさがりと自覚する平四郎は
何事にも首を突っ込み過ぎず、適度な距離を保っており
威張ることもなく気さくに町の人々に接するため、皆に慕われています。

しかし彼がまとめる地域にある鉄瓶長屋では
殺人事件を発端に、次々と不可解な出来事が続きます。
人望のあった熟練の差配人(長屋を管理する人)が失踪し、
代わりに若くて経験もない差配人がやってきて以来
他の店子たちもどんどん出て行ってしまう。
最初はすべて偶然だろうと楽観していた平四郎も、事態に疑問を持ちます。

人を疑うことや陰でこそこそ調査したりすることが苦手な平四郎は
自分の本分ではない事態に対して時に辟易としながらも
彼の人徳も手伝って、周りの人たちの協力を得ながら
少しずつ真相を手繰りよせていくのです。

まずは平四郎の甥っこ・弓之助。
お人形のような美しい顔形をしながら、
子どもとは思えないような鋭い洞察力を見せ、平四郎の片腕になります。
そんな弓之助に自分の役目を奪われて嫉妬する、平四郎の付き人・小平次や
冷静沈着・百戦錬磨で頼りになる岡っ引き・政五郎、
そして政五郎のもとにいる「おでこ」という子供は
聞いた話を何でも記憶して、必要な時に思い出せる能力があったりもするからビックリ。

また、長屋の人たちについてもそれぞれの人柄が描きこまれていて
特に、煮物屋を営むお徳や若い差配人の佐吉などは、
良心の塊のような愛すべき人たち。

しかし、ほんの一握りの人たちの悪意や不条理で身勝手な思惑が
事件の根源にあったのです。
めったに怒らない平四郎をも怒らせるような、しょうもなくてやるせないことが。

「今、この人はこう思っているんだろうな」と
気持ちを慮ることって、すごく大切なことです。
平四郎も周りの人たちも、みんなそんな優しい気持ちを持って人と接している。
でも、その一方で
「この人はどうせこう思ってやがるんだろう」というような
否定的な思い込みしかできない人もいる。
前者は相手の立場になっている、後者は自分の都合や不利益ばかりを気にしている。
その差が、この事件を引き起こしてしまったのだと思いました。

それでもやっぱり、全体を通してこの作品が暗く険しい印象を残さないのは
平四郎をはじめとする、登場人物たちのキャラの素晴らしさにあると言えます。
続編となる「日暮らし」も刊行されていますので
平四郎や弓之助やその他の愛すべきキャラたちにまた会うために
近いうちに読んでみようと思ってます。今からとても楽しみです!

(2007年1月23日読了/☆4)
  

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◆「マ」行の作者→宮部みゆき    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

2007.01.19 Fri
『図書館の神様』
「清く正しい自分」ってなんだろ?
自分らしさの境目で、1人の女性がゆっくりと変わっていくその過程が
とても丁寧に描かれている作品でした。

図書館の神様
図書館の神様
posted with amazlet on 07.01.19
瀬尾 まいこ
マガジンハウス

主人公の清(以下、キヨと書きます)は自分について、
「名前のとおり、清く正しい人間だった」と言っています。
実際、そうありたいと思って生きている人は多いかもしれないけれど、
過去の自分がそうだったと認められる人ってなかなかいないですよね。
そんなところが当時のキヨの弱さだったんじゃないかな、と思うのです。
ピンと張り詰めていて、しなることができなくて、いきなりポキっと折れちゃうような痛々しさ。

夢中になるものがあって、ただ真っ直ぐ生きてきたのに
高校最後の年に思いもよらない形でそれを取り上げられてしまったキヨ。
彼女は数年後、特に熱望するでもなく、ただなんとなく高校の国語講師となり、
本に全く興味がないのに部員がたった1名の文芸部の顧問になる。
学校の外では「不合理な恋愛」(つまり不倫)もしている。
そんなキヨの日常が、弟の拓実くんや不倫相手の浅見さん、
そして文芸部の垣内君とのやり取りを通じて描かれていきます。

キヨは弟・巧実くんについて「精神は軟弱」と言います。
「適当に嘘つきで、いい加減で、人の顔色ばかり見て、要領がよかった」と。
世間的にはこういったことを適度にできる人こそが“強い”というのに。
この巧実くんがとても姉思いで優しく、マイペースなナイスキャラの弟で、
彼が毎週のように訪れてはキヨにゆったり接してあげている。
差し入れたプリンの成分を気にするキヨに
「プリンなんて甘くてプルプルしてればいいの」と諭す。「まあね」と納得する。
何気ないやり取りがキヨの癒しとなっていきます。

そしてもう1人。文芸部の垣内君。
彼もまた、周りの目など気にせず、飄々としていてマイペースな男の子。
キヨもある意味そうなのだけど、彼女の場合のマイペースさは
「何か運動はしないの?」「どうして文芸部なの?」という、悪意はないけどストレートなもの。
それに対する垣内君は、ちゃんと受け入れるキャパシティもユーモアも持ち合わせていて
びっくりするくらいオトナだ。
「文芸部は何一つ同じことをしていない。僕は毎日違う言葉をはぐくんでいる」
なんて、なんかすごくイイではないですか。
他にも垣内君の言動は、ひとつひとつが染みわたるように穏やかなのです。

一方で「不合理な恋愛」相手の浅見さん。
浅見さんとキヨは他人との距離の取り方が似ているのでしょうね。
いや、昔のキヨとは似ていたのかな。
真っ直ぐすぎるところ、それに無自覚で他人の気持ちに無頓着であるところが。
夜中に読んだ本がただ怖くて声を聞きたくて電話をかけた時の浅見さんの反応や
それ以降に見せた浅見さんの引き際の対応なんかは、
たぶん昔のキヨなら同じことをするんだろうなとちょっと思いました。
(つまり私は浅見さんにはなんの魅力も感じ得なかった、
 そして不倫についてはやっぱりやるせない気持ちだけが残った、ということです)

とにかくキヨには、新しい世界と広い視野と感受性が必要だった。
そして弟や垣内君や生徒たちから、いろんなことを吸い取って
だんだんと丸みを帯びた人間になっていくのです。ゆったりと自然なペースで。

ただ、個人的には
部活最後の日のキヨと垣内君の場面(表紙にもなってますね)は
ちょっと読んでて気恥ずかしい、というか何となく2人に追いつけませんでした。
それまでの淡白な雰囲気とのメリハリだったのかもしれないけど。少し唐突で。
でも、文芸部の“朝連”の件とキヨに最後に届いた1通の手紙については、
キヨのこれからにとって、きっと救いになってくれるんだろうなと思えて
すごく良かったなと思います。

うまく言えませんが、
瀬尾さんの書く本は文体に癖がなくて、それでいて個性がないわけでもなくて
サラっとしてるのに冷たい感じじゃなくて
読んだ後になればなるほど、柔らかい印象を残すなぁと思いました。
(って、まだ2冊目なのにエラそうですが・・・)
きっと、好きな人にはすごく好きな世界なんだろうなと思います。

それにしても、キヨが勤める高校の海が見渡せる図書室。いいなぁ!!
そんな場所があったらい1日ずーっと居ついちゃいそうです。
 
(2007年1月17日読了/☆3.5)
  

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◆「サ」行の作者→瀬尾まいこ    Comment(4)   TrackBack(0)   Top↑

2007.01.16 Tue
『町長選挙』
『空中ブランコ』、『イン・ザ・プール』に続く、精神科医・伊良部シリーズ第3弾は
誰もが知ってるアノ有名人も患者として登場!?で
今までの2作とは少し違った雰囲気だったかも。

町長選挙
町長選挙
posted with amazlet on 07.01.16
奥田 英朗
文藝春秋

4編のうち3つは、実際にテレビや雑誌で国民的におなじみの
実在する有名人をイメージさせる人たちが
それぞれ患者となって伊良部総合病院を訪れるというストーリー。
(球団オーナーでもあった大新聞社の元会長、
 株の問題で逮捕されちゃったIT企業の元社長、
 驚異的な若さを保つ40代の某有名女優)

この小説はもちろんフィクションだし、取り上げている症状だって架空のものだけど
でももしかしたら、ここまで有名になってしまった人たちの心の中って
多かれ少なかれ当たっている部分もあるのかもしれないなーと思わされます。
著者の観察力とイマジネーションにあっぱれです。
普段、本としての活字に慣れていない人でも
それこそテレビや週刊誌を見るような感覚で、サクサク読んでいけるのではないでしょうか。

もちろん、愛すべき精神科医・伊良部の滅茶苦茶ぶりも健在☆
患者より誰よりこの人の頭の中(5歳児並?)や神出鬼没ぶり
固定観念の無さや世間体を気にしない図々しさのがよっぽどすごすぎるー!
もうとにかく笑えます。
でも時々、真実をついた鋭いことをズバズバっと言うんですよね。
一見なんの理屈もないようなドンデモナイ行動も、実は計算された荒治療なのか?
・・・いや、そこを勘繰っちゃ違う気がするな(笑)

そして、表題作の「町長選挙」だけは
どちらかと言えば善良で生真面目な一般人が主役、という
前回までのシリーズの流れを汲んだ話。
ただ、舞台は伊良部総合病院ではなく離島。
町長選挙で勢力が完全に二分した過疎の離島に伊良部が赴任してしまうという設定。
日常生活に支障をきたすほど病んでしまった主人公が
あえなく伊良部の診察を受けるという本来のパターンではないのだけど、
これもなかなか面白かった。
いつもは闇雲にひっかき回すだけの伊良部もちょっとイタイ目に遭ってるし(笑)

あと、今回は全編をとおして
伊良部の相棒(?)であるパンク魂のナース・マユミが大活躍。
彼女のキャラもこの作品には必須です。あり得ないけどスカっとします。

最初の方は、モデルとおぼしき有名人の顔がどうしても脳裏をかすめるので
伊良部先生のキャラがほんのちょっと薄れてしまったかなという気がしましたが
でもやっぱり、シリーズ続編が出たらまた読んでしまうのだと思います。
「コイツだいじょうぶ?」と思いながらも何故か続けて通院してしまう
伊良部の患者たちと図らずも同じ状態にさせられているようです(苦笑)
奥田英朗さんの文章の巧みさから生まれるスピード感、
そしてコミカルさ加減がクセになるのです!

(2007年1月13日読了/☆3.5)
 

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◆「ア」行の作者→奥田英朗    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

2007.01.12 Fri
『チョコレートコスモス』
舞台を観るのが好きだ → YES
漫画「ガラスの仮面」が好きだ → YES
両方「YES」なら是非この作品を読むべし!ハマること間違いなしです☆

チョコレートコスモス
恩田 陸
毎日新聞社

あらすじ:
幼い時から舞台に立ち、多大な人気と評価を手にしている若きベテラン・東響子は、
奇妙な焦りと予感に揺れていた。
伝説の映画プロデューサー・芹澤泰次郎が手がける芝居のオーディションが
近々大々的に行われるらしいという噂を耳にしたからだった。
同じ頃、旗揚げもしていない無名の学生劇団に、ひとりの少女が入団した。
舞台経験などひとつもない彼女だったが、その天才的な演技は
次第に周囲を圧倒してゆく。少女の名は佐々木飛鳥。
演じる者だけが見ることのできるおそるべき世界が、いま目前にあらわれる!


漫画『ガラスの仮面』へのオマージュとも言える作品。
著者ご自身もそう公言しておられるとか。

本能のままに模倣することで演技を開拓し
見る者をアっと言わせる天才ぶりを見せつける飛鳥、
環境にも美貌にも才能にも恵まれながら、それに甘んじることなく
常に自分を客観的に分析し、努力と経験を重ねる響子。
その構図はまさしく『ガラスの仮面』におけるマヤと亜弓。

ただし、漫画では彼女たちの表情や仕草を“画”という手段で
描ききることができますが
小説においては活字で伝えるしかありません。

しかしそこはさすがに恩田陸。
舞台を見守る人々(脚本家や大学の先輩)がその演技に揺れ動かされる様を通じて
「やっぱりこの2人って凄いのね!?」
と読者に思わせることに成功しています。
作中の言葉を借りるならば
―舞台の上で起きている世界を信じ、舞台の上で役者が演じていることを信じる演技―
を知らぬ間にさせられている観客になったような、そんな臨場感なのです。

ただひとつ、残念だったことを挙げるとするならば
佐々木飛鳥の人間性(主観)には一切踏み込まれておらず
感情移入するのが難しかったということ。
それは「自分がない」と称される飛鳥ゆえの意図的なものだとしても
東響子の苦悩や嫉妬や情熱が細やかに描かれていた分、余計にそう感じたのかもしれません。

そしてストーリーの後半は、女優たちが火花を散らすオーディションに占められます。
どちらが勝っているかということよりも
―舞台上の奥の暗がり、その先に広がっている世界―
選ばれた者だけが体感できるその世界に、天才がいかに辿り着くか・・・
そこをクライマックスとしています。

つまり“チョコレートコスモス”は、『ガラスの仮面』における“紅天女”。
オーディションはもうたっぷり観たのです!
無理難題をやり遂げる2人の素晴らしさはもう存分に知っているのです!!
で、その後はーっっっ?

恩田さん、そして美内すずえさん(「ガラスの仮面」作者)に
強く続編を願いたい!!
読み終えた後はそんな気分になりました。
(「ガラスの仮面」はまだ完結してないんですけどね。一体次巻はいつになるんだ!?)

(2007年1月11日読了/☆4)
 

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2007.01.11 Thu
『三月は深き紅の淵を』
何がイイってこのタイトルです。
「三月は深き紅の淵を」
神秘的で、美しい。すごく心惹かれてしまう。まるでこの作品の登場人物たちのように。

三月は深き紅の淵を
三月は深き紅の淵を
posted with amazlet on 07.01.12
恩田 陸
講談社

『三月は深き紅の淵を』
この作品の中に登場する、幻の本のタイトルでもあります。
作者は不明・自費出版で部数はごく僅か、回収された形跡あり、
所有者はたった1人に1晩しか貸してはならない―。
そんな幻の本。
その本を巡る、4章のストーリーで構成されています。

それぞれの章ではこの『三月は深き紅の淵を』を
結局は架空のもの、としていたり
実際に書いた人物、を匂わせたり
将来生み出す可能性、を感じていたり
今まさに執筆していたり、と様々な異なる見方で扱います。

おそらくこの本についてはこれ以上多くを語らない方がいいように思います。

ひとつ言及するならば、それは第4章。
他の3編と少し役割(置かれ方)が違っています。
この章は言わば著者の頭の中。感覚。そして読書の歴史。
私が読んでいる「三月は深き紅の淵を」という本を書いている恩田陸という人の現実と
彼女が生み出す虚構の世界が入れ替わりながら波のように押し寄せるのです。
戸惑いながらもそのループに身を任せてしまうような、不思議な感覚でした。
(ただ、個人的には他の3章ほどのめり込むことはできませんでしたが…)

同時にこの作品は、他の恩田陸作品の予告編
とも言うべき位置づけになっているらしい。
この本に断片的に登場する幾つかの虚構の部分が
ひとつの作品となって続いていく、いわゆる「三月シリーズ」。

私はこれからそれらを順に読んでいこうと思っています。
そして、おそらく近いうちにまたこの本を手に取ることになるでしょう。
そんな予感に包まれながら、本を閉じました。

(2007年1月7日読了/☆4)
 

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2007.01.04 Thu
『しゃべれどもしゃべれども』
2007年。新春第1冊目となる読了本は
今まで私が興味を持ったことがなかった、落語の世界のお話でした。

しゃべれども しゃべれども
佐藤 多佳子
新潮社

あらすじ:
しゃべりのプロだろ、教えてよ―
あがり症が災いしてテニスコーチの仕事が覚束なくなった従弟・良に頼まれ
話し方教室を開くハメになった若い落語家の達也。
失恋による極度の人間不信で人との会話ができない美女・五月、
大阪から引っ越してきて関西弁が抜けず、学校で浮いた存在になっている小学生・村林、
他人に嫌われることを恐れるあまり言葉が出ない野球解説者・湯河原
といった面々までひょんなことから通ってくることになり・・・。
嘘がつけない人たちが落語を通じて織り成す人間模様を描く。
(「BOOK」データベースより抜粋、一部編集)


主人公・達也は、今昔亭三つ葉という芸名で落語の世界に生きる若手の噺家。
伝統的な古典落語をこよなく愛し、普段の生活においても着物姿で駆け回るという
生粋の江戸っ子。情熱があって、短気で、一本気な男。
そんな彼が、「言葉を口にする」ことにそれぞれの問題を抱えた4人と関わり合い、
彼らに自宅で落語を教えることになります。

まず感じたのは、この本に溢れる洒落っ気と勢い。
それは達也の性格そのままに、明るくて気持ちのいいものでした。
「馬鹿が上につくお人好し」でいつの間にか4人の生徒の事情に巻き込まれ
本職の世界ではマイペースな師匠に振り回され
家に帰れば自宅で華道教室の師範をしている祖母にこき使われる(笑)・・・
(このお婆さんが粋で気風がよくてカッコいい女性でした!)
そんな達也の心の中の葛藤や愚痴が、
洒落っ気やちょっとした皮肉の混じったまったく嫌味のない正直な言葉で綴られ、
読んでいて実に気持ちがいいのです。

4人に落語を教えることになった経緯もテンポよく
無理なくスムーズに描かれていくのですが
スムーズじゃないのがこの4人の陥っているそれぞれの問題。
「落語を教えることで解決するのか」と達也も含めた全員が半信半疑だし
落語という共通の目標がありながらも4人はなかなかまとまらない。
そして三つ葉としての達也自身も、噺家として
自分の落語とは何なのかという壁にぶち当たるのです。

とりわけ最後まで話の核となってくるのが小学生・村林。
周囲に何を言われようとも本人は関西弁を矯正しようという気はまったくなく
関西弁に誇りをもった、超意地っ張りな少年。

元プロ野球選手の湯河原は彼の学校での立場に一役買おうと野球を教える、
その姿をみた良がテニスコーチとしての自分を省みる、
そしてそんな彼らの姿を通して、達也は自分の好きな落語を
自分の声で4人に聞かせたい落語を取り戻していく、という相互効果が効いていました。

その村林少年が最後に高座に上がり、落語を披露するシーン。
クラスのボス(イジメっ子)は見にきてくれるのか、
うまく噺を終えることができるのか
こちらまでドキドキハラハラしながら、面白可笑しく読みました。
みっともないと思われても、安心して笑ってもらえたらそれでええ・・・・
という彼の心意気がとても立派に映り
私も達也といっしょにホロリと涙してしまいました。

そしてもう1つ。
女心に疎く、自分の気持ちにも鈍感な達也の恋模様。
達也のエネルギーが凍っていた彼女の心を溶かしていくんですね。
ありがちな展開ではあったものの、本当に自分の心に響く言葉を持った相手と
ぶつかり合いながらも距離を縮めていくというラストは
最後までこの本のテイストを失わず、とても自然だった気がします。

単純ですが、落語をしっかり自分の耳で聞いてみたくなりました。
号泣ではないけど、じんわりと心が温かくなる物語でした。

(2007年1月3日読了/☆4.5)

【余談】
今年の夏、TOKIOの国分太一さん主演で
この作品が映画化されるそうです。
少しイメージと違うかなぁ(国分さんだとソフト過ぎる?)気がしますが・・・
落語や周囲の人に愛情深い、粋な達也をスクリーンでも見せてほしいです!
 

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◆「サ」行の作者→佐藤多佳子    Comment(0)   TrackBack(1)   Top↑