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「 ◆海外(翻訳) 」 の記事一覧
| HOME | 『わたしを離さないで』
我々人間の中には、ひとりひとり違った“記憶”が存在しています。
同じものを見て、聞いて、食べて過ごしたとしても ひとりとして自分とピッタリ同じ記憶をもつ人などこの世にいないのです。 だからこそ、思い出というものは特別なんだと私は思います。 酔いしれたり、美化したり、やり過ごしたり、葬り去ったり・・・ そうやって、いろんなことを自分の中で繰り返しながら、記憶は日々姿を変えていく。 それが生きていくということではないでしょうか。 この本は、ひとりの女性が記憶を呼び起こしながら、 思い出を・・・そして自らの「生」を語るお話です。 誰のものでもない、彼女だけの記憶と彼女だけの生―。 主人公は、自他共に認める優秀な介護人として働くキャシー・Hという女性。 ヘールシャムという全寮制の施設で育った彼女が、 ルースとトミーという親友と過ごした日々を思い返しながら 静かに語っていくという形式で物語は進みます。 施設のしきたりや寮生活での楽しみ、友人との諍いと仲直り、先生に対する思慕の念など、 小児期〜思春期の多感な日常が、自然豊かなヘールシャムの風景をバックに、 滑るようにするすると語られ、じんわり引き込まれていきます。 特にキャシーとルース、2人の女性の心理を浮き彫りにする筆致が実に巧みでした。 訳文もすごくシンプルで読みやすく、翻訳モノがあまり得意でない私でも 違和感なく落ち着いて読めました。(感謝) 決して抗えない宿命を知るべきか知らざるべきか、 知ったところでどうやって生きていくべきか、 焦燥感や諦念に身を焦がしながらも、彼らは自分だけの「生」をまっとうすべく模索します。 冒頭にも書きましたが、そういったお話です。 ネタバレすると読む面白さが半減してしまうと思いますので、これ以上は書きません。 この本を読んですごく思ったのは、 「生きたい」と願う人がいたとして、その命を奪い去ることは絶対に許されないように その人の中に育まれた記憶がある限り、 それを奪い去る権利は誰にも許されないのではないか、ということでした。 途中で奪い去るくらいなら、失いたくないと思うような記憶を持たせなければいい。 その方がきっと幸せなんじゃないか。乱暴ですが、そんなことを考えました。 未読の方には何が言いたいかよく分からないかもしれません。(すみません) でも、本当に多くの人に是非読んでみてほしいと思える作品です。 何も予備知識のない、真っ白な状態で読まれることを強くオススメします。 (私はそうだったので、とても良かったと思っています。 ネット上には、思い切りキーワードの書かれた感想がたくさんあって「コラー!」ってなりました。 本当に、そういうのはやめていただきたいのです) (2007年11月8日読了/☆4.5)
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