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「 ◆「ア」行の作者→伊坂幸太郎 」 の記事一覧
2008.01.11 Fri
『ゴールデンスランバー』
伊坂さん、やってくれました!(感涙)
ファンとして、この作品を読めたことを嬉しく思います。
いやファンならずともこれは読むべき1冊だと思います。
現時点での最高傑作ではないでしょうか。

ゴールデンスランバーゴールデンスランバー
(2007/11/29)
伊坂 幸太郎

商品詳細を見る

あらすじ
仙台での凱旋パレード中、突如爆発が起こり、新首相が死亡した。
同じ頃、元宅配ドライバーの青柳雅春は
「大きな謀略に巻き込まれているから逃げろ」と旧友・森田に促される。
折しも現れた警官は、彼に向けてあっさりと拳銃を発砲した。
どうやら、首相暗殺犯の濡れ衣を着せられているようだ・・・。
この巨大な陰謀から、果たして彼は逃げ切ることができるのか?
(出版社からの紹介を一部引用) 


青柳雅春の元交際相手である樋口晴子が
蕎麦屋のテレビで何気なく見た画面上で爆発事件を目撃する第一部と
発生直後から繰り返し取り上げ続けるテレビ報道を
病院の入院患者が無責任な予測をしながら延々と視聴し続ける第二部。
ここまでで青柳雅春という人物が世間ではどう見られているのか、
どういった経緯で犯人と断定されたのかが明らかになるのだが、
第三部はいきなり「事件の二十年後」に飛ぶ。
ここで、ノンフィクションルポ風の客観的な視点で
この事件まつわる数多くの謎と“二十年後の青柳雅春に関する認識”が語られ
読者にひとつの大きな拠り所を与えておいて
満を持して第四部、事件発生当日から2日間の青柳雅春の一部始終が描かれる。
正直、読む前は「逃亡劇=リアリティがないのでは」という先入観があったのだけど
この巧みな構成に、最初から見事に引き込まれてしまいました。

※以下、少しネタバレありかも。未読の方は、ご注意を!



恐ろしく大きな陰謀がうごめいていることを大学時代の旧友・森田
が身を呈して知らせてくれるところから、青柳の逃亡劇は始まる。
それは「とにかく逃げろ」「おまえ、オズワルドにされるぞ」という不可解な一言。
数年前に暴漢からアイドルを助けた際、テレビに映る自分を子供に自慢してくれた友人、
一方で無闇に発砲してくる警察官。彼が信じたのは友人の言葉だった。

「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ」

森田がむかし言ったこの言葉が、最後の最後まで青柳を支え続ける。
国家権力にも組織的陰謀にも負けない、たったひとつの強いメッセージ。
これ以上はないほどの危機的状況を悲観し絶望しそうになる時も
青柳は森田や樋口晴子らと過ごした大学時代を思い出し、そこからひらめきや勇気を得る。
そして、昔の思い出や仲間、信頼していた人たちが水面下で動き
彼自身も知らないところで救われるのだ。
それはまさに青柳の「習慣と信頼」によって得られたものだ。
暗澹たる現実に挿し込まれる、賑やかで温かい過去からの報奨が胸に響く。

もちろん、逃げる先々で新しく出会う人たちの助けもある。
昔からの知り合いにも、青柳が運良く出会った人たちにも共通するのは、
青柳の無実を信じる、というよりも彼がそんな大罪を犯したとは信じてないということだ。
長いものに巻かれ、目先の新しい情報を真偽も見極めずにどんどん誇張して垂れ流し
ロックオンした標的を容赦なく突付き続けるマスコミの特性と
それを鵜呑みにして迷走してしまいがちな大衆心理とは真逆をゆく、
自分の目で見たものだけを信じるという人たち。

中でもやっぱり、樋口晴子と青柳雅春の父親の存在は大きい。
「俺は犯人じゃない」という青柳のメッセージを見つけ
「だと思った。」とたったひと言だけ書き置く樋口。
マスコミにマイクを向けられ責めたてられても動じることなく
「ちゃっちゃと逃げろ、雅春」と言う父親。
「信じている」という言葉よりも、この2人の取ったシンプルな言動にすごくグっときた。

某文学賞の選考委員風に言えば
こんな状況でこんな気の利いた台詞が言えるのか?みたいな疑問は残るのかもしれない。
けれど、そもそも選考委員の先生だって私たち一般読者だって
自分の息子や元恋人が全国指名手配になって国家を敵に回して
逃亡してるなんて状況になったことはないわけで、
そうなった時にどこまでの余裕があるのかどうかなんて、分かりっこないんだから
別にいいんだと思う。そんなちっぽけなことを気にしていられないくらいの
正しいメッセージがそこにはあるのだから。

事件が終息した後の、最後の第5部はもう涙なしに読めなかった。
特に最後の5ページ。ここを書くために、すべてがあっただろうと思える位の
出来すぎのラスト。予定調和かもしれないけど、文句なし!
今までの作品でやや気になっていた台詞回しのアク(癖?)
みたいなものもすっきり取り払われ、テンポのいい洒脱な台詞の応酬に
嫌味がなくなった点もすごく良かったと思う。
(途中で出会う連続無差別殺人犯・キルオとの会話なんかは
 少し洗練されすぎだろうと思わなくもなかったけど・・・)



とにかく、これは“伊坂幸太郎、ここにあり!”とでも言うべき
快心の作品であることは間違いありません。
ビートルズのナンバー“Golden slumber”を聴きながら、もう1度読みたい。
そして多くの人に読んでみてもらいたいと思いました。

(2008年1月11日読了/☆5)
  

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2007.05.22 Tue
『フィッシュストーリー』
フィッシュストーリー
伊坂 幸太郎
新潮社 (2007/01/30)

これまでの伊坂作品の脇役たちが主役となって展開される4編の短編集。
今流行のスピンオフ的作品、とでもいうのかな。
小気味よい会話と、張り巡らされた伏線の妙は健在で、それぞれ楽しめました。
特に好きだったのは表題作の「フィッシュストーリー」。
売れないロックバンドが、最後のレコーディングで叫んだ音にならない声が時空を越えて
二十数年前、現在、三十数年前、十年後の4つの物語が行き交う展開はまさに真骨頂。
短編ならではの清々しさが光る、とてもいい作品でした。
最後の「ポテチ」も、何とも憎めない人々が織り成す会話が楽しくて、
そこから個々の行動の色んな動機が作り出されていく過程が面白い。
ついホロリとさせられるラストへの展開も良かったです。(黒澤さん、ええ男!)
ただ、やはり伊坂作品をまったく読んだことのない人には
やっぱり過去の長編(特に「ラッシュライフ」)を先に読んでから読んでほしい。
登場人物の描写が省略されてたりするし、その方が絶対楽しめると思うから。
逆に私の場合は、過去の作品をまた読み返したくなる衝動に何度も駆られましたけどね・・・。
うーん、そういう意味では、記憶の片隅から色々引っ張り出す作業に気をとられ、
純粋に作品として楽しめなかったような気がして、ちょっと残念です。
過去作品とこの本を続けてもう1度読み直したいな。そして、もっとマシな感想を書こう(笑)

(2007年5月22日読了/☆3.5)
    

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2006.11.29 Wed
『終末のフール』
小惑星があと8年後に地球に衝突する。人類が滅亡する。
ありがちなハリウッド映画のストーリーでも、誰やらの大予言とかでもなく、
本当に紛れもない事実としてその日がやってくると知らされたとしたら、
私は、あなたは、そして世界中の人々は、一体どうするだろう?

終末のフール
終末のフール
posted with amazlet on 07.01.12
伊坂 幸太郎
集英社


あらすじ:
2×××年。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年後。
犯罪がはびこり、秩序は崩壊した混乱の中。
仙台市北部の団地に住む人々は、いかにそれぞれの人生を送るのか?


私が、一つ一つの短編に共通していると感じたのは
「許したい」あるいは「許されたい」と願う心。 
悲現実的で恐ろしく失望的な設定なのに、
この本が穏やかで軽やかなのは、
そこに一貫して「許す」という思いが綴られているからかもしれません。
また、伊坂作品には必ず盛り込んである、各編の登場人物どうしのリンク
(「あっ。さっきの章に出てきた○○さんが通りかかった!」みたいなの)も楽しいです。

個人的にオススメのお話はこちら。
「太陽のシール」 
  ずっと子供を望んでいた夫婦が、その事実すらすっかり忘れていた時
  新しい命を授かる。
  生まれても3年しか生きられない我が子を産むべき否か。
「鋼鉄のウール」
  鬱状態の両親と共に暮らし、絶望し、許すことのできない少年。
  子供の頃に通っていたキックボクシングジムで、
  当時と変わらずトレーニングを続ける男と出会い、自分に立ち向かう。
「演劇のオール」
  家族を失った女優志望の女性。
  他人が失った大切な誰か(母であったり、姉であったり、恋人であったり)を演じるうちに
  本当の結びつきについて考え始める。

  
そして中でも特に印象に残ったのが
「鋼鉄のウール」に登場するキックボクサーが発したこの言葉でした。

「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」


ズシーンときました。
当たり前のように、人生はあとン十年も続くものと思ってて
今日と明日なんてほとんど変わり映えしないと思い込んでて
だから、それなりにしか生きられていない・・・のか、私は・・・と。
私は弱いけど、弱くてズルズル流されてしまうけど
でもちゃんと覚えておかなくちゃダメなんです。こういう気持ちを。

他にも「ハッ」とさせられるような、いい言葉がたくさんありました。
(今、手元に本がないので、ちゃんと紹介できないのが残念なくらい)
まっすぐ向き合って読んでみてほしい、そんな本です。

(2006年11月26日読了/☆4)
 
【余談】
伊坂幸太郎さんの本はすべて持っていて、大好きな作家さんなのですが
私はこの本を半年以上も放置してしまっていました。情けない。

だからと言って、この本になかなか興味が湧かなかったわけじゃないんです。
この本は(ハードカバーでは)伊坂さんの最新作。
ということは、“これを読み終える”=“伊坂作品の未読が残ってない”状態になる、ということ。
それで「読んでしまうのが惜しい」気がしてしまったのです。おバカ・・・

ところが。
映画化もされた『陽気なギャングが地球を回す』の続編
『陽気なギャングの日常と衝撃』が6月に発売されていたことを、
なんと私はつい最近知りました。
文芸書の新刊コーナーばかりうろついていたので、
ライトノベルはノーチェックだった!なんてこった!!

ってことで、“伊坂作品の未読”が1冊手元にあります。
これで安心。ホクホクです(笑)
早く読みたいけど、図書館の予約本が一気にやってきそうので先にそっちかな。
  

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