私の本棚。読了本の感想等をぼちぼち綴ってマス♪
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ぴのこ

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「 ◆「ア」行の作者→その他 」 の記事一覧
2008.01.14 Mon
『精霊の守り人』
児童文学でありながら、読書の好きな幅広い年齢層の大人たちを続々と虜にし
NHKでアニメ化もされた「守り人シリーズ」の第1作。
“ファンタジー”と分類されるジャンルは従来あまり得意ではなかったのだけど、
文化人類学者でもあられる著者によって
隅々まできちんと無駄なく無理なく創られた、しっかりとした物語でした。

精霊の守り人精霊の守り人
(2007/03)
上橋 菜穂子

商品詳細を見る

あらすじ:
短槍使いの名手で、用心棒として身を立てる女・バルサは
偶然通りかかった青弓川の橋から落下した新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムの命を救う。
宮廷に呼ばれたバルサは、チャグムの母である妃に見込まれ
チャグムを連れて逃げてほしい、命を守ってほしいと依頼される。
彼はその身に水妖の卵を宿しており、そのせいで父である帝から命を狙われているというのだ。
帝の隠密である<狩人>たちに追われながら、
同時にその卵を食らおうとする怪物・ラルンガの存在に脅かされながらも
バルサはチャグムを守るべく、体を張って戦い続ける―。


皇子の重大な秘密を知ってしまったからには、
その依頼を断ればその場で殺され、承諾すれば命を賭けた戦いが続く。
いずれにせよ運命を受け入れざるを得なかった三十路の女・バルサの生き様が
とにかくカッコいいです。
鍛え上げた身体能力に短槍使いの技、的確な状況判断ができ、人を見る目もある。
勿論、何の因果もなかった皇子の身柄を引き受けることに戸惑いや迷いもあるのだけど、
バルサ自身も幼い頃に似たような過去があって、見殺しにできない。
幼いチャグムと旅を続け、ひ弱な彼を鍛えていくにつれ
次第に親子の情にも似たものが芽生え、固い絆で結ばれる2人。
バルサの幼馴染で、彼女に好意を寄せる薬草師タンダやその師匠である呪術師トルガイなど
2人に力を貸す人たちにもそれぞれ魅力があって、
異世界を描いた物語でありながら、普遍的で人間らしい感情がベースになっています。

そして、よく言われるのがこの作品の「世界観」の素晴らしさ。
「世界観」って言葉、正しく解釈できてるかどうか気になったので調べてみると
>世界およびその中で生きている人間に対して、
>人間のありかたという点からみた統一的な解釈、意義づけ。
とありました。
そう!その“統一的な解釈”が最後までブレないというか
読んでる側からしてもきちんと整理出来るところが気持ちよく読めるポイントかもしれません。

たとえば、目に見える人間の世界(サグ)と同じ空間に重なって存在するという
精霊の世界(ナユグ)。呪術を会得した者とチャグムのような特殊な状況にある者だけが
見ることができるというその世界の描写もそうだし、
今回の主軸でもある、チャグムの身に宿った水妖の伝説が覆される過程にしてもそう。
上辺とか思いつきではなくて、物語(ストーリー)を作るより事前に
1つの事象、1人の人物に対して、枠組みや生い立ちを隅々まで構築してるんだろうな
という印象を受けました。
また、ありがちな「正義」と「悪」のはっきりした書き分けはなくて、
チャグムを追放することを決めた星読博士も、バルサを追う<狩人>たちも
皆がそれぞれに、その世界で生きていくことに懸命であるところに説得力がありました。

気になったのはチャグムの扱いかな。
彼の内面を、彼の視点でもう少し掘り下げても良かったんじゃないかなと思ったこと。
その身に起きたことはしっかり描いてあったけど、チャグム心の持ち様みたいなものが
少し霞んでしまっていたような気がしました。
あと、戦いの場面については「この人たちならきっと大丈夫」っていう安心感が先に立ってしまい、
「一体この先どうなるの!?」っていうハラハラ感があまり味わえなかったのが残念。

最後になりますが、カタカナが苦手な私は、固有名詞のカタカナがちょっと辛かったです。
「ラルンガって誰だったっけ??・・・あ、卵を食う怪物のことか・・・」みたいなことしきり。
チャグムに卵を産みつけた「ニュンガ・ロ・イム(水の守り手)」なんて
最後の最後まで覚えられる気がしませんでした(汗)。
その辺りは字面的にそのままの日本語でもいいんじゃないかと思うんですけど・・・。

(2008年1月14日読了/☆4)
  

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2007.07.31 Tue
『空飛ぶタイヤ』
空飛ぶタイヤ
空飛ぶタイヤ
posted with amazlet on 07.08.20
池井戸 潤
実業之日本社 (2006/09/15)

某自動車メーカー社製の大型トレーラーが走行中にタイヤの前輪が外れ、
歩道を歩いていた女性を直撃し死に至らしめたという事故―。
今から5年前のことになりますが、未だ私たちの記憶に鮮明です。
それだけ衝撃的で痛ましい事故でした。いや、事件でした。

この小説はその事件をモデルにした作品です。もちろんフィクションですが
財閥系大企業の裏側にある隠蔽体質、選民意識、保身、弱者軽視・・・
それらが引き起こした「リコール隠し」という
自動車メーカーとして絶対にあってはならない過ちを浮き彫りにした意欲作だと言えます。

ストーリーの軸となるのは、事故を起こしたトラックを所有する運送会社の赤松社長。
トラックの製造先であるホープ自動車による調査で
「脱輪の原因は運送会社の整備不良」という結果を出され、赤松運送は信用を失墜。
経営は傾き、社長自身も「業務上過失致死」という容疑で逮捕間近という窮地に追い込まれます。
が、社内の整備体制を調べれば調べるほど、会社側に落ち度はなく、納得がいかない・・・。
赤松社長は守るべき家族や社員、何の罪もない被害者と遺族のために
自らの手で真実を究明しようと立ち向かいます。

それに対して、まったく不誠実な対応しか見せないホープ自動車側。
有無を言わせない権力で会社を牛耳る常務取締役や
徹底的な事なかれ主義で事態をやり過ごそうとする幹部などが
社会的な「悪」として完全に書き分けられています。
しかしながら、必ずしも世間の常識は企業の常識とは一致しないのです。
ましてやそれが旧態に復した大企業であればあるほど・・・。

そうした矛盾に歯痒い思いをし、苛立ちを覚えますが、
社員や家族に逆に助けられながら頑張り続ける赤松社長の姿にはただただ感服します。
緻密でリアルな描写に最後まで手に汗握りながら一気に読み進めました。
形勢が逆転していくラストは痛快で、とても読み応えのある作品でした。

ひとりの命や多くの人々の安全よりも、
社名や肩書きや採算や体裁を守ることにばかり躍起になった結果として
引き起こされる事件・事故がここ最近後を絶ちません。
作中に「コンプライアンス(法令遵守)」という言葉がでてきますが、
世間から非難されないための盾としてではなく
消費者・利用者・視聴者など自社にとっての「客」を最優先にして
改めてその言葉の意味を考えてほしいものです。

責任をなすりつけ合い、駆け引きに翻弄されている人々の中で
やり場の無い怒りや悲しみを一生抱え続けなくてはならない被害者や遺族を
これ以上増やさないためにも。

(2007年7月31日読了/☆4)
  

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2007.07.18 Wed
『晩夏に捧ぐ 』
晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編>
大崎 梢
東京創元社 (2006/09/30)

前作「配達あかずきん」(感想はコチラ)に続く、成風堂書店事件メモの第2弾は出張編。
しっかり者の書店員・杏子&勘の鋭いアルバイト店員・多絵のコンビが
長野の老舗書店で起きた幽霊騒動の謎に挑む、というストーリーです。

率直に言うと・・・読んでいてちょっとイライラしました。
今作は短編集だった前作よりも大きな事件(25年前の殺人事件)が関わっていて
登場人物もそれなりに多いので長編の構成も仕方がないとは思いますが、
関係者への事情聴取もコレと言って大きな展開はなく、
真犯人解明の布石となるエピソードも弱い。
今思い出そうとしても「あれ?結局誰が犯人だったんだっけ?」って思い出せない(汗)。

探偵役となる多絵ちゃんが何も考えてないんだかすごく深いことを考えているんだか
どっちかよく分からない無邪気な雰囲気・・・というのは
「金田一少年の事件簿」のハジメちゃんぽくてまあアリかなと思いますが、
相棒であるはずの杏子さんのキャラクター(性格)とか方向性がどうにも掴みづらく、
2人を心から応援する気になれないのがすごく残念。 

ただやはり前作同様、書店の描写はものすごくイイんですよ。 
今回の事件の舞台となった「まるう堂」本店のこだわりも、息子が営む支店の近代的な雰囲気も
目に見えるようにイキイキと描かれているんです。書店好きとしてはたまらない!
こんなにいい書店を幽霊騒動なんかでなくすわけにはいかない、という部分では
杏子さんにとても共感しました。

(2007年7月18日読了/☆3)
  

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2007.06.13 Wed
『雪屋のロッスさん』
雪屋のロッスさん
雪屋のロッスさん
posted with amazlet on 07.07.13
いしい しんじ
メディアファクトリー (2006/02)

ありとあらゆる(架空も含む)職業をモチーフにした、心温まるショートストーリー30編。
本全体に漂う雰囲気が、なんというかものすごく丁寧で柔らかい。
それぞれのストーリーには共通して“人間の(時には物の)生命”について触れられており
人間の嫌な部分も隠すことなくところどころに染み出している。
ともすれば暗くも重くもなりがちだけど、不思議と哀しくはならない。
一言で言うなら、大人が読む上質な童話、御伽噺(おとぎばなし)という感じでしょうか。
童話と呼んでしまうと子供向けみたいだけど、この作品のシュールな部分、深み、そして儚さは
色んなことに麻痺した現代の大人が読んで、じっくりと噛み砕くべきもののような気がします。

印象に残っているものを挙げるとすれば
・棺桶セールスマンのスミッツ氏
・風呂屋の島田夫妻
・果物屋のたつ子さん
・雪屋のロッスさん
・プロバスケット選手のスーホン君
・旧街道のトマー

このあたりかなぁ。読んでから時間が経ちすぎておぼろげになってしまっている部分が多く
しかも図書館の返却期限がギリギリになってしまって、
最後の方はかなり慌しく読んでしまったのが本当に悔やまれます。
これは、自分の心の奥に耳を傾けながら、じっくりゆっくり読むべき本だと思いました。

(2007年6月13日読了/☆3.5)
 

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2007.05.02 Wed
『配達あかずきん』
配達あかずきん
配達あかずきん
posted with amazlet on 07.06.13
大崎 梢
東京創元社 (2006/05/20)

駅ビル内の書店・成風堂を舞台に、
しっかり者の書店員・杏子&勘の鋭いアルバイト店員・多絵のコンビが
本にまつわる様々な謎に取り組んでいく本格書店ミステリ。5編の連作短編集です。
とにかく「書店大好き!」な私としては読まないわけにはいきません。(笑)
書店員さんの裏側の仕事が垣間見れるところも良かったし、
お客さんからのヒントや書店員ならではの本の知識を寄せ集めて事件や謎を解決する
という設定も面白かった。ただ、ミステリと呼ぶには、謎解きがやや強引すぎるかな〜と思ったけど。
でも、全編通して気軽に楽しめました。
個人的には「六冊目のメッセージ」が好き。誰かのために本を選ぶことって難しいけど、
その本を通じてこんな素敵な出会いがあるなんて!本好き乙女(?)なら悶絶間違いなしデス!
 
(2007年5月2日読了/☆3.5)
  

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