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「 ◆「カ」行の作者→海堂尊 」 の記事一覧
2007.11.07 Wed
『ジェネラル・ルージュの凱旋』
『チーム・バチスタの栄光』から続く、“バチスタシリーズ”第3弾。
東城大学医学部付属病院が舞台となるメディカル・ミステリーは
本来の主人公である(それにしてはここ最近影が薄かった)不定愁訴外来の田口先生が
院内の問題に巻き込まれて奔走するという形にようやく戻ってきました。

ジェネラル・ルージュの凱旋ジェネラル・ルージュの凱旋
(2007/04/07)
海堂 尊

商品詳細を見る

 あらすじ:
桜宮市にある東城大学医学部付属病院の万年講師・田口公平の元に、
一枚の怪文書が届いた。
それは救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着しているという、
匿名の内部告発文書だった。病院長・高階から依頼を受けた田口は
事実の調査に乗り出すが、倫理問題審査会(エシックス・コミティ)委員長・沼田による
嫌味な介入や、ドジな新人看護師・姫宮と厚生労働省の“火喰い鳥”白鳥の登場で、
さらに複雑な事態に突入していく。
将軍(ジェネラル・ルージュ)の異名をとる速水の悲願、
桜宮市へのドクター・ヘリ導入を目前にして速水は病院を追われてしまうのか・・・。
(宝島社HPより抜粋・修正)


このシリーズはとにかくキャラ設定に重きを置いているというか
それぞれにコードネーム(異名)みたいなのをつけてインパクトを与えようとする節があり、
そこが癇に障ることも多いのですが、
今回の“将軍(ジェネラル・ルージュ)”速水部長はといいますと
それはもうカッコいい筋金入りのスーパードクターでございました!将軍ピッタリ!!
まあ、「ルージュ」の部分はさすがにちょっとあり得ないだろう・・・と引きましたけど
彼の技術と判断力、そして理想と信念には惚れ惚れしてしまいました。
目の前で苦しむ人の命を少しでも早く、できるだけたくさん救いたいという
医師としていちばん明確な使命を成し遂げることが
現実のしがらみの前にいかに大変なことであるか・・・そういったメッセージも強く感じました。

で、そんな速水部長を告発する内部文書を
同期でもある田口センセがどのように処理していくのか、というのが今回の事件なのですが
「大学病院は魔の巣窟ですか!?」と思わず問いたくなるような
手強い、というかすごくヤな感じの人間がこれでもかと立ちはだかり、
あの白島がちょっと霞んでしまうほどの理論武装、すなわち屁理屈の応酬は
スピード感もあってなかなか読みごたえがありました。(ネチネチ沼田もいい味出してました)
田口先生と速水先生は全く違うタイプだけど、
どちらも長いものに巻かれることなく、ちゃんと筋を通すんです。そこが素敵。
敵と目されていた意外な人物が助け舟を出してくれるというサプライズもお見事でした。
ラストがちょっと安っぽいメロドラマ的展開だったのはご愛嬌か。

前作『ナイチンゲールの沈黙』と同時進行という設定で
内容もかなりリンクしてる部分が多かったので、
「ナイチンゲール」→「ジェネラル・ルージュ」と続けて読むのがベターかもしれません。

最後に・・・このシリーズはまだまだ続くのだと思いますが
「バチスタ」の桐生先生にしても「ジェネラル」速水先生にしても
こんなに優秀な人材があんなことやこんなことになって、この病院は大丈夫か?と
心配になってしまいます(苦笑)
あと、姫宮のキャラなんですけど・・・私は正直あまり好きじゃなくて
今回もICUで速水先生と絡むシーンとかは、なんか納得できないというかイライラするというか。
これから先も彼女はこういう位置付けで走り回るのでしょうか・・・(不安)。

とかなんとか言いながら、このシリーズの続きが出たらきっと読むと思います。
ついついそう思わされるところが魅力なんでしょうね。
次はどんな事件が起こるのか、田口センセの活躍が楽しみです。

(2007年11月7日読了/☆3.5)
  

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2007.10.11 Thu
『螺鈿迷宮』
螺鈿迷宮螺鈿迷宮
(2006/11/30)
海堂 尊

商品詳細を見る
 
スピンオフ、っていうんですか?
本編では脇役であった人物や物語の中心でなかった場所に焦点を当てて、
別のストーリーを制作するという、最近流行りの手法ですね。
この作品は、『チーム・バチスタの栄光』に始まる、いわゆる“バチスタシリーズ”のスピンオフ的作品です。

舞台は、これまでの東城大学医学部付属病院ではなく、同じ市内にある桜宮病院。
桜宮病院は老人介護センター、ホスピス施設と寺院を一体化させた複合型病院で、
終末医療の最先端施設としてメディアの注目を集めている一方、数々の黒いウワサがあった。
ひょんなことからそこに潜入することになったのが、今回の主人公で落第医大生の天馬大吉。
大吉はそこで姫宮という看護師に出会い、この病院に隠された謎を解明していくのだが・・・。

それまでのバチスタシリーズで、名前だけはやたら登場していた、白島の部下・氷姫。
それが看護師(に扮した)姫宮でした。
キャラクター的にものすごく意外な感じでしたが、まあここは良いとして。

感想を率直に言えば、途中までは全然引き込まれなかった・・・。
大吉クンの1人称での語り口が妙に大げさというか、芝居がかってるというか。
面白さを出そう出そうとして上滑りしてる感じがしました。
桜宮病院の人々も、それぞれに割と強めのキャラ付けがされているにも関わらず
実像が思い描けないし、ギュっとまとめるだけのエピソードがない。
ま、あり得ない人物設定やエピソードが弱いのはまだ許せても
やっぱり、これまでの作品にはあったリーダビリティが今回感じられなかったのは、
読者としてはちょっと辛かったです。

とは言え、事件が解き明かされていく終盤はなかなか読み応えがありましたし、
今後のシリーズに影を落としそうな伏線(東城vs桜宮の対立関係)はしっかり残してありました。
しかし、この作品の結末が持つ意味は一体なんだったのか?と問われるとどうも答えにくい。
どちらかというと前フリ部分(終末医療や医療行政の在り方、「死」に対する考え方)
に踏み込んで、事件性を薄くした方が面白かったのではないか、とも思いました。

かなり辛口な評になってしまいましたが、これも期待の表れなのでございます。
次回作はシリーズの本筋に戻るようなので、田口センセ&白島のコンビ復活に期待です。
あ、この本の1つ良かった点を添えるならば、装丁ですね!
螺鈿のヌメっとした妖しい光が見事に浮き出ていて、美しいなぁと思いました。

(2007年10月11日読了/☆2.5)

  

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2007.05.28 Mon
『ナイチンゲールの沈黙』
ナイチンゲールの沈黙
海堂 尊
宝島社 (2006/10/06)

前作「チーム・バチスタの栄光」(感想はコチラ)の続編。
東城大学医学部付属病院が舞台となるメディカル・ミステリーです。
“愚痴外来”の田口医師&厚労省の“ロジカル・モンスター”白鳥のコンビが事件に挑む・・・
という触れ込みだったんだけど、うーん、ちょっと詰め込み過ぎ。
今回の主役は、病院内一の美声を持ち抜群の歌唱力を誇る小児科のナース・小夜。
そんな彼女が担当するのが、眼球に発生する癌(網膜芽腫)を患う瑞人とアツシ。
瑞人の父親が殺害され、院内で捜査が行われるという展開なんですが、
ハッキリ言ってそこまでが長い!不定愁訴外来の田口先生が捜査に協力するのは分かるけど、
白鳥の投入はなんだか強引な印象だし。
さらに、おなじみの面々に加え、伝説の歌姫とそのマネージャー、薄幸な美少女、
おまけに白鳥のライバル・新キャラの加納警視正・・・etc、登場人物過多。
各科の教授にまでそれぞれニックネームが付けられたりしていて、
もう誰が誰だっけ?どの人が事件に絡む重要キャラなんだっけ??という状態になりました。
今回の事件の肝となる「小夜の歌」の部分も、なんか最後まで理解しにくかったなぁ。
・・・って、いろいろ難癖をつけましたけど、相変わらずグイグイ読ませてくれますし、
今後への伏線になりそうなエピソードもあって面白かったです。
ただもう少しだけ、落ち着いて、狭い範囲で展開してくれると読者としてはありがたいです、はい。

(2007年5月28日読了/☆3)
  

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2006.11.06 Mon
『チーム・バチスタの栄光』
『キャラ立ち小説』という言葉があるらしいです。
登場人物の個性がはっきりと色分けされている小説、のことを指すそうで
その意味でいけば、この小説はまさにソレです!



あらすじ:
東城大学医学部付属病院は、米国の心臓専門病院から
心臓移植の権威、桐生恭一を招聘し
心臓移植の代替手術であるバチスタ手術の専門の、通称“チーム・バチスタ”を構築。
成功率100%を誇り、その勇名を轟かせていた。
ところが、3例立て続けに術中死が発生。
原因不明の術中死と、メディアの注目を集める手術が重なる事態に
危機感を抱いた病院長・高階は、
神経内科教室の万年講師・田口公平と厚生労働省の変人役人・白鳥圭輔に調査を依頼する。
壊滅寸前の大学病院の現状。医療現場の危機的状況。
そしてチーム・バチスタ・メンバーの相克と因縁。
医療過誤か、殺人か。遺体は何を語るのか―。
栄光のチーム・バチスタの裏側に隠されたもう一つの顔とは―。
第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。


ストーリーの語り部は、調査役・田口公平。
彼の視点(1人称)でテンポよく進められます。
序盤は田口による聴き取りファイルという形式が取られ
チーム・バチスタメンバーの個々の役割や思惑、相関関係が把握しやすく読みやすいです。
ただ、それは実は表面的なものにすぎず、
その後、田口が実際に術中死を目の当たりにしたことを契機に第2部へと突入。
ここからいきなり登場するのが、もう1人の調査役・白鳥圭輔です。

田口目線での描写は後半も変わらないまま
白鳥の超がつくほど個性的なキャラクターの前に、振り回され役になっていきます。
彼の滅茶苦茶な挙動、支離滅裂かつ腹立たしくなるような台詞まわし、
そして真相を手繰り寄せる嗅覚・・・
これらがストーリ―のテンポを一気に押し上げ、前半の田口ファイルとの対比が面白いです。

印象的だったのが
「パッシヴ・フェーズ(受動的)」と「アクティヴ・フェーズ(能動的)」
という考え方。
相手の言葉にひたすら耳を傾け、心理を読影する田口のやり方が前者、
独自の理論を展開し(時に相手を怒らせ)、本性を引き出してたたみかける白鳥が後者。
(ドラマで言えば、古畑任三郎なんてまさに「アクティヴ・フェーズ」の巧者ですね)

無論、事件を解明するのは白鳥の存在であって
他の方のレビュー等を読んでも、白鳥圭輔というキャラクターへの賞賛が多いのだけれど
私は個人的に田口のキャラが好き。
派手より地味、攻めるよる受ける、な感じの男性が好きなので(笑)
あと、チーム・バチスタの中心・桐生恭一の存在感も捨てがたいです。

ただし、ミステリー小説としてどうかというと、ちょっと評価が難しいかもしれない・・・。
医療という特殊分野が題材なだけに、素人にはトリックの判別がしにくいし、
読み進めていて引っ掛かる部分がズバリ直結・・・という印象だから。
(私の場合は2者のどちらか・・・と思っていたが、最後はやはりという感じでした)
あと、登場人物全員が明らかに「喋りすぎ」(特に後半)な感じも否めません。
もう少し謎めいていても良かったかも?

しかしそれを差し引いても、第3部の後味の良さも含めて存分に楽しむことができた1冊。
著者が現役の医師であるだけに、複雑な大学医学部の内情もリアリティがあって
素直に「おもしろかった!」と言えます。
田口&白鳥コンビの続編シリーズも既刊されているので、そちらも読んでみようと思っています!

(2006年11月5日読了/☆4)
 

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