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「 ◆「サ」行の作者→その他 」 の記事一覧
| HOME | 『小袖日記』
本筋とは関係ないところからで申し訳ないんですが、
私、一人称を「あたし」と書く文章が、実は苦手でして・・・。 幼い子供が言うのはともかく、ある程度の年齢から上の人が使うと 女であることの自意識の強さを感じるというか、 なんとなく相容れないものがあるんですよね。 だからかなぁ・・・最後まで「小袖」=「あたし」に気持ちが乗らなかったのは・・・。
あらすじ:不倫に破れ、生きる気力をなくした29歳の「あたし」は 失意のまま街を彷徨っていたところ雷に打たれ、突如、平安時代へタイムスリップしてしまう。 気が付くと、「小袖」という17歳の女性の体と入れ替わっていた。 小袖は中宮彰子の教育係である香子さまの元で働く女官なのだが、 なんと香子さまこそがあの『源氏物語』を執筆中「紫式部」であるらしい・・・。 香子さまの片腕となって取材するうち、 「あたし」は源氏物語のモチーフとなった事件の意外な真相に触れることになる。 『源氏物語』は古典の授業で少し齧った程度で 現代語訳をきちんと全編読んだことないし、あらすじも大まかにしか知りません。 この小説では、『源氏物語』の有名な章をまったく別の筋立てで描いていくので、 (それを香子さまが脚色して、本来の『源氏物語』に執筆しなおすという形) 本物をちゃんと読んでおいたらもっと面白かったのかなーと思います。 逆に言うと、本家の『源氏物語』を読んでみたいという気持ちにさせられたことが この本を読んでのいちばんの収穫だった気がします。 タイムスリップという使い古された手法はともかくとして、 平安時代の立ち振る舞いや言葉遣いをカラダが覚えていたりとか タイムスリップしてきた人がもう1人出現したりとか そのことを香子さまがいち早く理解してくれたりとか ずーっと「小袖」にとって都合のいい展開が続くのが気になりました、 こんな特殊な設定なのに、主人公にとってのいわゆる“ピンチ”な場面がまったくないんですよね。 だからハラハラドキドキ感がなくて、そういうところがちょっと手抜きかなーという感は否めず。 まあ、この作品のいちばんのポイントはかの有名な『源氏物語』を どのように調理して違うストーリーを仕立てるか、という点だと思うし その部分は歯切れよく、独自性もあったので面白く、楽しく読めました。 香子さま=紫式部が非常に聡明でユーモアに溢れる素敵な女性として描かれていて 作品の中で小袖に語る言葉も温かく、2人の信頼関係はすごく微笑ましかったです。 ただ、現代では不倫に破れて自暴自棄だった「あたし」が 平安時代の女性の強さを垣間見て、女の幸せとは何かを考える!みたいな説得力はなく、 あくまでも親しみやすさ重視というか、軽い読み物として及第点という感じです。 最後に、この本は装丁の絵がすごく可愛い! 実はそれが、私がこの本を手にした理由でありました(笑) (2007年12月5日読了/☆3)
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『ショートカット』
遠く離れた誰かに「会いたい」という気持ちを抱えた女の子たちが主人公の連作短編集。 片想い、遠距離恋愛、別れた恋人への未練、ひと目ぼれ―。 彼女(彼)らがその人に「会いたい」理由は様々だ。 遠くといっても大阪と東京。物理的には決して行けない距離じゃない。 でも色んな理屈をつけて躊躇ったり諦めたりを繰り返す、恋愛特有のあの気持ちが 繊細に綴られる。特別な事件があるわけじゃなく、1台のカメラで長回しするように 彼女たちのありふれた日常がただ淡々と綴られているのがまたリアル。 イマドキの若者の生活感や他人との距離の取り方がちゃんとすくい取ってある。 4編すべてに登場する“なかちゃん”という男の子がポイントになっていて (順番は前後するけど、実は彼の1日を追った短編集でもある) 東京にどうしても会いたい女性がいるという彼のパワーに感化され、 主人公の彼女たちが「会いたい」相手との本当の距離、 すなわち自分自身の心に素直になる瞬間が読んでいて気持ちいい。 会いたい人にはいつだって会いにいける。 時間も距離もお金も相手の都合も関係なく、ただ強く思って動けばいい。 ショートカットするボタンはいつだって自分の心の中にある。 (2007年7月11日読了/☆3.5)
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『犯人に告ぐ』
6年前のある事件の責任を取る形で地方に飛ばされていた刑事・巻島史彦に 新たに発生した連続幼児殺害事件の捜査指揮官として白羽の矢が立つ。 上層部は、捜査官自らがテレビ番組で犯人に訴えかけるという史上初の“劇場型捜査”を 試みようとしており、彼はその表舞台に立たされることになったのだ。 かつて、事件を追うマスコミと対立し、メディアの怖さを誰よりも知る巻島だったが ただ恐れるのではなく、その強大な力をしたたかなまでに利用しようとする―。 生放送のニュース番組における緊迫感、メディア間でのスクープの抜き合い、 警察内部で巻島の足を引っ張る人間との駆け引き等、大変見ごたえがありました。 そう、「読む」というより「見る」という感覚を持つような、臨場感のある作品でした。 ちょっと犯人の視点が弱いというか、結末があまりにあっけなかったなぁとは思いますが、 そういう点も含めてサスペンスドラマがお好きな方ならきっと楽しめるハズ! 巻島自身が心の奥底で引きずり続けていた過去の遺恨や心の傷と向き合う姿も印象的でした。 (2007年5月12日読了/☆4) 【補足】 豊川悦司さん主演で映画化され、今年の秋に劇場公開されるそうです。 (6月24日にはWOWOWで先行公開されます!) トヨエツさん、巻島の雰囲気にピッタリかも。
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌 『クローズド・ノート』
ちょっと出来すぎな感もある、ストレートな恋愛小説。
イマドキな設定の中に古典的な仕掛け。 どう感じるかは人それぞれだと思います。 主人公は教育大学に通う香恵という女の子。 性格設定としては、おっとりした天然ボケタイプで 人の意見に影響されやすく、でも思い込んだら一途で割りと大胆。 男性目線で見ると「なんかほっとけないな、あの娘・・・」的な存在でしょうか。 そんな香恵がバイト先の文具店で知り合うのがイラストレーターの石飛さん。 穏やさの中にほんの少し憂いがあって、掴み所がなくて人を惹きつけるような男性です。 ※表紙にもなっていますが、2人が出会うのは万年筆売場。 様々な万年筆について、それはそれは詳しく書かれています。 これを読むともれなく万年筆で字を書いてみたい衝動にかられます(笑) 石飛さんへ募る想いと、なかなか発展しない関係に加えて 親友の彼氏(鹿島さん)からの積極的なアプローチ。 悩む香恵が次第に心の拠り所としていくのが、 アパートの前の住人が置き忘れていったノートと手紙でした。 そこに綴ってあったのは伊吹という名の女性の日記。 小学校教諭として日々の出来事を細やかに記録し、真摯に仕事に向き合う姿勢と その一方で、大学時代に片思いをしていた男性と再会し、 ひとりの女性として揺れる気持ちが溢れていました。 手に取るつもりのなかったそのノートを開きはじめてから、 香恵は深く共感し、伊吹先生の言葉に背中を押されるようになっていきます。 そして香恵自身の恋がそのノートに繋がって、思いがけない結末を迎えるのです―。 ・・・いや。 「思いがけない」と驚くのはおそらく本の中の香恵ちゃんだけで 大半の読者は途中からもうすべての筋書きが読めてしまうことでしょう。 まったくもってアっと驚く展開ではないし 香恵以外のキャラクターもかなりステレオタイプ。 鹿島さんの女たらしっぷりとか、石飛さんに好意を寄せるお嬢様(恋のライバル)とか。 そうだそうだ・・・アレですよ。 この分かりやすさと後に引きずるものの無さは、読みきりの少女漫画みたいな感覚です。 今ひとつ感情移入できにくかったというか、心を揺り動かされなかったのは 主人公・香恵が子供っぽいと感じたからだろうか。 「そこでその言動はあり得なくない?」と度々思ってしまったのは それとも私が歳をとって偏屈になってしまってるからだろうか。 けれどこの本を格調高くしているのは、間違いなく伊吹先生の日記。 「こんな先生がいてくれたらなぁ」と理屈抜きで思わせてくれるような素敵な女性なのです。 そしてあとがきを読むことでさらにその思いが確かなものになります。ああ、そうだったのかと。 このあとがきだけで、評価ポイント☆0.5アップでした。 (2007年2月17日読了/☆3)
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